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現れた『影』 ~ 第26話 ~

《アースクレイドル》

[アースクレイドル 内部]

アクセル「…北米地区が インスペクターの手に落ちた、か」
レモン「ええ」
アクセル「『こちら側』の連邦軍も… 奴らの戦法に対処できなかったということだな」
レモン「無理ないわね。 私達だって、そうだったもの」
アクセル「ああ。…だが、今は違う」
レモン「そうね……手段はあるわ。 だからこそ、私達はここにいる」
アクセル「…とはいえ、分の悪い博打だ。 あまり気は乗らんな、こいつは」
レモン「またそれを言う。 こっちの戦力は、あの時以上に 揃いつつあるのよ?」
アクセル「その一つがあの黒い人型か」
レモン「ええ。 新型といっても、厳密にはアシュセイヴァーの カスタムタイプね」
レモン「W17が送ってきたATX計画の機体データや 手に入れたビルトファルケン……」
レモン「それらを参考にして改造した機体なの」
アクセル「バランスは大丈夫なのか?  …強い部分を集めたからといって、総合的に 強くなるとは限らんぞ?」
レモン「そのあたりは、私の開発者としての 力を信用してほしいところね」
レモン「完成したら、あなたに乗ってもらおうと 思ってるんだけど…? あのラピエサージュにね」
アクセル「“継ぎ接ぎ”……か。 名前のセンスは嫌いじゃないが、おれには ソウルゲインがあってる、これがな」
アクセル「W17に送ってやればいい。 …それでもう一度やりあうのも悪くないかもな」
レモン「もう!  そんなことできるわけないでしょうに」
アクセル「冗談さ。『こちら側』に来て以来、 まともに戦闘をしていないんでな。 少し歯ごたえのある奴とやり合いたいだけだ」
アクセル(おれが倒すべきベーオウルフは… この世界にはいないわけだしな)

[アースクレイドル 内部]

バン「……作戦を予定通りに第3段階へ移すだと?  異星人共を放っておけと言うのか、貴公は?」
ヴィンデル「その通りだ」
バン「奴らは北米地区の制圧に力を傾注しており、 まだ他地区へ現れておらん。叩くなら今の内だ」
ヴィンデル「それは連邦軍に任せておけばいい」
バン「彼らに任せておけぬから 我々はノイエDCを結成し、行動を起こしたのだ」
バン「現に連邦の北米方面軍は 異星人に敗北したではないか」
ヴィンデル「そのため、連邦は他方面軍部隊を 北米へ投入するだろう……」
ヴィンデル「そして、 我らはその隙を突き、本懐を遂げる。 異星人と戦うのはそれからでも遅くない」
バン「彼らに制宙権を 握られているのにも拘わらずか?」
ヴィンデル「そうだ」
バン「貴公、まるで彼らのやり方を 知っているかのような口ぶりだな?」
ヴィンデル「こちらで得たデータに 基づく判断だ」
バン「……」
ヴィンデル「バン大佐、 今が連邦の中枢を掌握する絶好の機会なのだ」
バン「いや…… 我々は異星人に対処するため、態勢を整える。 第3段階への移行はその後だ」
ヴィンデル「それはノイエDC首魁としての 判断なのだな?」
バン「無論だ」
ヴィンデル「……よかろう」
(扉が開閉する・ヴィンデルが立ち去る)
バン「……」
バン(フン……本性を現し始めたか?  ヴィンデル・マウザー……)
バン(だが、異星人が現れた以上、 ノイエDC本来の使命をはき違えるわけにはいかん)
バン(軍事政権の樹立が目的とは言え、 異星人の台頭を許すようなら本末転倒だ)
バン(連邦軍に組み込まれた同胞、 現行の態勢に不満を持つ軍人達に訴えかけ……)
バン(いや、連邦軍そのものと一時的に手を組み、 異星人を撃退することを考えねばならんか……)

[アースクレイドル 内部]

レモン「……状況はほぼ同じね。 インスペクターが次の行動に出るまで しばらくかかるはずよ」
ヴィンデル「機は熟しつつあるな」
レモン「そうね。 そろそろ、あの娘を呼び戻した方が いいのではなくて?」
レモン「量産型Wシリーズの生産が 軌道に乗ったとは言え、ナンバーズは 数少ないんだし」
アクセル「ナンバーズと言えば、W17… あいつはファーストジャンパーの行方を 掴んでいるのか?」
レモン「報告がない所を見ると、まだみたいね」
アクセル「…そう簡単な話でもないか、こいつは。 だが、いつまで奴を遊ばせておくつもりだ?」
ヴィンデル「W17には まだあの部隊にいてもらわねば ならない。こちらの切り札としてな」
アクセル「機能不全が発生しているという話を 聞いたぞ? その件は?」
レモン「W16の報告では少し異常が あるみたいだけど、任務遂行に問題はないと思うわ。 ……デリケートな作りにし過ぎたかもね」
アクセル「……」
レモン「それとも、やっぱり心配?」
アクセル「貴様の技術を信用していないわけじゃない。 だが、10番台のナンバーズは少し…な」
レモン「……」
ヴィンデル「……いずれにせよ、 現状のあの部隊の力を調べておきたい」
レモン「……仲間に出来ないかしら?  ハガネとヒリュウ改を」
アクセル(レモン…?)
ヴィンデル「今は難しいだろう。 だが、状況を整え、現状と未来を 理解させれば……あるいは」
レモン「自分達が勝つと 考えている内は……ということね」
ヴィンデル「勝利への道は 自ら踏み外す者はいまい」
レモン「了解。 ところで、誰を行かせるの?  W15? それとも、W16?」
ヴィンデル「私が行く」
レモン「まさか……『ツヴァイ』を使うつもり?」
ヴィンデル「ああ、そうだ」
アクセル「まさか…もう修復できたのか?  『システムXN』を…!?」
ヴィンデル「それは……」
(扉が開閉する)
イーグレット「……現状の システムXNはまだ完全ではないが、 通常機能の使用に支障はない」
レモン「フェフ博士……」
イーグレット「ヴィンデル、 ツヴァイの出撃準備が整った。 いつでも出られるぞ」
ヴィンデル「了解した」
アクセル「…説明してもらいたいな、こいつは。 あのシステムの存在を部外者に漏らすどころか… 触らせるとはどういうつもりだ? ヴィンデル」
イーグレット「心外だな。 俺はお前達の素性や目的を知った上で 協力しているのだぞ?」
アクセル「……」
レモン「ま、技術提携って奴ね。 こっちも色々提供したし」
ヴィンデル「システムXNの調整には 彼の頭脳が必要だった」
ヴィンデル「それに、我々の最終目的を 忘れたわけではあるまい?」
アクセル「……もちろんだ。 そのためにファーストジャンパー…ヘリオスが要る」
レモン「でも、ヴィンデル……一人で大丈夫?  何だったら、私も付き合うけど」
ヴィンデル「お前にはお前の仕事があるはずだ」
ヴィンデル「ソフィア・ネート…… いや、『メイガス・ゲボ』の調整がな」
レモン「だけど、 ハガネやヒリュウ改の戦力は 以前よりも増強されているわ」
レモン「いくら少数とは言え、 油断は禁物よ」
アクセル「ちょうどいい。おれも出よう。 W17の様子も直接見ておきたい」
レモン「体がなまってるから、でしょ?  残念ながら、ソウルゲインは調整中。 装甲の全交換…思ったよりもかかってるのよ」
アクセル「…ラーズを使うさ。 場合によってはW17を排除することになるが?」
レモン「止めても聞かないでしょ?  …それに、それで落とされるなら、あの子も そこまでということよ」
アクセル「フッ。 …先に出撃準備をしておくぞ、ヴィンデル」
(扉が開閉する・アクセルが立ち去る)
レモン「変な方向に火がつかないといいけどね」
ヴィンデル「…フェフ博士、例の子供達は使えるか?」
イーグレット「いや、 まだ調整に時間がかかる」
イーグレット「代わりにスクールの者を使うがいい。 ちょうどセトメ博士が再調整を終えたところだ」
ヴィンデル「了解した。 アクセルと共に前衛をやらせる。 手配を頼むぞ」
イーグレット「ああ」
(扉が開閉する・イーグレットが立ち去る)
レモン「……フェフ博士の子供達、か。 どうも好きになれないわ、私は」
ヴィンデル「戦争は 好きか嫌いかで行うものではない。 それに……私は嫌いではない」
レモン「どうして?」
ヴィンデル「目的を達成するためだけに 創られていながら、それがさも自分の 意思のように自覚し、行動する……」
ヴィンデル「風体の問題ではなく、 このコンセプトはむしろ美しいとさえ 言えるだろう」
レモン「……」
ヴィンデル「お前のWシリーズもそうではないのか?」
レモン「違うわね。 感情や判断力を個々に持たせる… いえ、持っていると思わせるのは反対よ」
レモン「それによって引き出せる力は 大きいけど、ひどく不安定だもの。 ……スクールの子供達みたいに」
レモン「そして、調整されている以上の力を 出す事はできない…その呪縛を解かない限りは、 次のステージにはたどり着けない…」
ヴィンデル「何を言いたいのかわからんな。 私は指令を確実にこなせるのなら、それでいい」
ヴィンデル「話はここまでだ。ツヴァイで出る」
レモン「行ってらっしゃい。 向こうでは、この段階の前後でつまづいた」
レモン「こちらでは……今度こそは……」
ヴィンデル「……私もそのつもりだ」

[不明 (回想)]

クエルボ「……ブロンゾ27……」
ブロンゾ27「……何ですか、セロ博士?」
クエルボ「今日からお前とコンビを 組むことになる子を紹介するよ」
(扉が開閉する)
ブロンゾ28「……」
クエルボ「彼の番号は28。 君と同じクラスの子だ」
ブロンゾ28「……」
ブロンゾ27「私、ブロンゾ27。 よろしくね」
ブロンゾ28「……」
ブロンゾ27「? どうしたの?」
ブロンゾ28「おれの相手がこんな子だなんて……」
ブロンゾ27「ちょっと!  それ、どういうことよ!?  私に何か不満があるの!?」
ブロンゾ28「そ、そういう意味じゃねえっての!」
ブロンゾ27「じゃあ、どういう意味よ!?  言ってごらんなさいよ!」
ブロンゾ28「い、いや…… あの、その……」
ブロンゾ28「む…… 胸がおっきい子だな、って」
ブロンゾ27「な、な、な……!」
ブロンゾ27「なに言ってんのよ!  バカ! エッチ! スケベ!!」
クエルボ「お、おい、お前達…… ケンカするんじゃない」
ブロンゾ27「す、すみません……」
クエルボ「これからは 二人で訓練を行うことになる。 だから、仲良くするんだ」
ブロンゾ27「は、はい」
クエルボ「いいね? ブロンゾ28」
ブロンゾ28「へ、へ~い」
ブロンゾ27「……私が27で あなたが28ってことは……私の方がお姉さんね」
ブロンゾ28「そ、そういうことになるな」
ブロンゾ27「じゃ、 さっきのことは許してあげるわ。 あらためて、よろしくね」
ブロンゾ28「……ああ、こっちこそ」

[不明 (回想)]

ブロンゾ27「……え?  私達の名前が変だって?」
ブロンゾ28「だってさ、 セロ博士はクエルボ・セロだし……」
ブロンゾ28「アギラばあさんは アギラ・セトメ……」
ブロンゾ28「アードラーのじじいは アードラー・コッホって名前がある」
ブロンゾ28「クラスと番号で呼ばれてるのって、 おれ達ぐらいだぜ?」
ブロンゾ27「そういう名前なんだから 仕方ないじゃない」
ブロンゾ28「でもな、 何か変なんだよな……何か嫌なんだよな」
ブロンゾ28「それに……おれ達ここへ来る前の 記憶がねえのは……何でだ?」
ブロンゾ27「そんなこと気にしてんの、 あなただけよ」
ブロンゾ28「いや、 ラトゥーニも同じことを言ってたぜ」
ブロンゾ27「え……?  ラトゥーニ11が……?」
ブロンゾ28「ああ、 こないだあの子がアードラーのクソじじいに いじめられて泣いててさ……」
ブロンゾ28「姉さんの代わりに おれが話を聞いてやったんだ」
ブロンゾ27「そう……。 あの子、また泣いてたの……」
ブロンゾ27(ラトゥーニクラスで残っているのは 11号だけだもの……無理ないわね……)
ブロンゾ28「……な、やっぱ変だよ。 何でおれ達はセロ博士みてえな 名前じゃねえんだ?」
ブロンゾ27「そ、そんなこと…… 私にもわからないわよ」
ブロンゾ27「だって、 セトメ博士やメイガス・ケーナズが 私達のことそう呼んでるんだし……」
ブロンゾ28「……」
ブロンゾ28(でも、やっぱ変だ……)
ブロンゾ28(おれ達の名前も…… おれ達に昔の記憶がねえのも……)

[???]

アギラ「……ブロンゾ27……」
ゼオラ(違う…… 私はゼオラ・シュバイツァー……)
アギラ「……ブロンゾ27……」
ゼオラ(違う……私はゼオラ。 ゼオラなんです……)
アギラ「よくお聞き、ブロンゾ27。 ブロンゾ28はもういない。 28号は死んだんじゃ」
ゼオラ(28号じゃない……。 あの子の名前はアラド……アラド・バランガ……)
アギラ「ブロンゾ28はもういない」
ゼオラ(違います、セトメ博士……。 アラドです……)
アギラ「28号はもういない」
ゼオラ(アラドです……あの子は……)
アギラ「28号はもういないんじゃ」
ゼオラ(ア……ラド……あの子……は……)
アギラ「ブロンゾ28は死んだ」
ゼオラ(あの……子は……)
アギラ「ブロンゾ28は死んだのじゃ。 連邦軍の者共の手にかかってな」
ゼオラ(死……んだ……?  ブロンゾ……28……は……)
アギラ「そうじゃ、28号は死んだ」
ゼオラ(死んだ……もういない……)
アギラ「じゃから、忘れるんじゃ。 ブロンゾ28のことを……完全にな」
ゼオラ(忘れる……)
ゼオラ(忘れる……忘れる……)
ゼオラ(忘れる、忘れる、忘れる、 忘れる、忘れる、忘れる……)

[アースクレイドル 内部]

イーグレット「……どうだ?  セトメ博士」
アギラ「だいぶ手間がかかったわい。 任務を完遂させるための特殊思考 パターンが裏目に出おった」
イーグレット「オリジナルならともかく…… 紛い物かつ不要な感情や記憶を与えるから そうなる」
イーグレット「アードラー・コッホが ブーステッド・チルドレンを 見限ったのはそのせいだろう?」
アギラ「フェフェフェ、お前はわかっておらん。 人としての感情や記憶が スペック以上の力を引き出す」
アギラ「例え、それが偽物であってもな」
イーグレット(フン……下らん。 俺の子らにそのような物は不要だ)
クエルボ「……それで、ゼオラは?」
アギラ「シングルとしての再調整は成功した。 戦場で28号に出くわしても大丈夫じゃろう」
(扉が開閉する)
ゼオラ「……」
クエルボ「ゼオラ……」
ゼオラ「おはようございます、博士」
アギラ「具合はどうじゃ、27号?」
ゼオラ「大丈夫です、母様」
クエルボ「母様……だって?」
アギラ「フェフェフェ…… そうじゃ、クエルボ。 ブロンゾ27はワシの可愛い娘じゃ」
クエルボ「……ゼ、ゼオラ…… アラドのことは……」
ゼオラ「アラド?  アラド・バランガのことですか?」
クエルボ「あ、ああ……そうだ。 あの子は……」
ゼオラ「アラド・バランガ……。 ラトを連れ去った連邦軍の兵士。 倒すべき私の敵……」
ゼオラ「そう認識しています」
クエルボ「ゼオラ……!」
イーグレット「ブロンゾ27、 お前の次の任務はわかっているな?」
ゼオラ「はい。 アラドを始めとするハガネの者達を 倒し、ラトをここへ連れて帰ります」
イーグレット「うむ。 ビルトファルケンを用意してある。 ヴィンデル達と共に出撃しろ」
ゼオラ「わかりました」
(扉が開閉する・ゼオラが立ち去る)
アギラ「……フェフェフェ、 上手くいったようじゃの」
イーグレット「フッ、 記憶操作と暗示にかけてはさすがだな」
アギラ「伊達に特脳研におったわけではないわ」
アギラ「もっとも……あそこにここまでの設備は 整っておらんかったがのう」
クエルボ「……」

[アースクレイドル 格納庫]

ゼオラ「アクセル隊長、 自分はゼオラ・シュバイツァー 曹長であります」
ゼオラ「今回の任務では 何卒よろしくお願い致します」
アクセル「…ずいぶん若いな。 貴様には前衛をやってもらうことになる。 …危険だが、問題ないか?」
ゼオラ「はっ!  栄光あるノイエDCのために!」
アクセル(…まるで人形だな、こいつは。 どうしてこういう連中を戦争に使いたがるのか…)
アクセル「一つ言っておく、曹長。 SMSC…アンジュルグと、ゲシュペンストMk-III には手を出すな」
アクセル「そいつらの相手はおれがする。 確かめたい事があるんでな」
ゼオラ「了解です」
アクセル「では、出撃準備を急げ」
(足音・アクセルが立ち去る)
ゼオラ「……」
オウカ「……ゼオラ」
ゼオラ「オウカ姉様……」
オウカ「くれぐれもラトのことをお願いね」
オウカ「本当は私も行きたいのだけど…… ラピエサージュの調整に 立ち会わなくてはならないの」
ゼオラ「心配しないで、姉様。 ラトは必ずこの私が連れて帰ります」
オウカ「ええ……頼むわね、ゼオラ。 行ってらっしゃい」
ゼオラ「はい、姉様」

《地球連邦軍南欧方面軍 アビアノ基地》

[アビアノ基地]

マリオン「試作機の搬出は終了しましたわ。 後はこの基地での調整作業ですが……」
カーク「ああ。 一人につき、一機種で分担するしかないな」
カーク「とりあえず、 タカクラチーフはフェアリオン2体の 組み立て作業に専念してくれ」
ツグミ「わかりました」
カーク「参式の1号機は 後々のエンジン交換作業と……」
カークT-LINKシステムの 調整のこともあり、私が担当する」
ツグミ「3号機の方は?」
カーク「参謀本部から命令で、 このアビアノ基地へ預けることになった」
マリオン「では、AMボクサーは?」
カーク「あれに関しては、伊豆にいる ロブの力を借りねばならん……。 調整作業は一時保留だ」
マリオン「では、 私の担当はビルガーということで よろしいですわね?」
カーク「ああ。 なお、あれ以外の試作機は地球にある マオ社の工場で保管する」
ツグミ「……参式1号機のパイロットは、 カザハラ所長の指示でブルックリン少尉と クスハ少尉に決まっていますが……」
ツグミ「ビルトビルガーには 誰を乗せるのですか?」
マリオン「ふふ…… すでに目星をつけてありますわ」

[シュミレータルーム]

アラド「わわっ!  ラミアさん、ちょっとタンマ!」
ラミア「…実戦でそんなものが認められると思うのか?」
(ミサイル飛来)
アラド「うわっ!!」
(爆発)
アラド「や、やられた……!」
キョウスケ「……そこまでだ、アラド。 シミュレーターから出ろ」
アラド「りょ、了解ッス」
キョウスケ「ラミアも出ていい。一息入れよう」
ラミア「了解でござりまするので~す」
アラド「負けちゃったりしたので~す」
(扉が開閉する)
カチーナ「アラド!  てめえ、何回撃墜されりゃあ気が済むんだ!?」
アラド「じゅ、15回ぐらいッスかね」
カチーナ「あたしは正直者は好きだぜ?  そういう奴はグラウンド1周だッ! 行ってこい!」
アラド「は、はいっ!」
(扉が開閉する・アラドが立ち去る)
エクセレン「……それじゃ審査員の皆様、 今の模擬戦の採点をどうぞ~」
リュウセイ「う~ん、40点?」
キョウスケ「20点だな」
カチーナ「10点で充分だ!」
エクセレン「わお、お厳しいことで!」
マリオン「……では、3人の意見を 聞かせてもらいましょうか」
リュウセイ「やっぱり、ビーム系の武器は 向いてないと思うんだけど」
キョウスケ「破壊力重視の、 大型の物がいいだろうな。やはりアルトのような タイプが向いていると思うが……」
カチーナ「斬艦刀とは言わねえが…ぶん回せる剣だろ」
マリオン「なるほど……。 では、現状の機体で彼に向いていると 思われるものは?」
リュウセイ「そうだな……アルブレードかな?」
キョウスケ「なるほど… 振り回せる大型の近接戦武器か」
カチーナ「その内、 赤く塗ってやろうと思ってたが…… しょうがねえ、あいつに譲ってやるぜ」
マリオン「わかりました。 色々と参考になりましたわ。 では、後はよろしく」
(扉が開閉する・マリオンが立ち去る)
エクセレン「ラドム博士…あんなことを聞いて 何をやらかすつもりなのかしらん?」
ラミア「ビルトビルガーの接近戦用武装を決めるための ものだと聞いちゃいましておりましたりしますが…」
エクセレン「な~るへそ。 それでキョウスケにカチーナ中尉、リュウセイ君って わけなのね」
エクセレン「で、結果的にビルトビちゃんの 右腕には何がつくのかしらね?」
キョウスケ「アルトでの採用が見送られた… リボルビング・バンカーかも知れんな」
リュウセイ「ブレード・トンファーならぬ チェーンソー・トンファーなんてのはどう?」
カチーナ「漢なら、指先一つでダウンだぜ」
エクセレン「…カチーナ中尉、一応女の子なんだから」
カチーナ「一応って付けんな!  それに、今はアラドの話だろうが!」
(扉が開閉する)
アラド「カチーナ中尉!  グラウンド1周、行ってきました!」
カチーナ「おう、ご苦労」
アラド「それで、あの……。 クスハ少尉が……」
クスハ「……皆さん、お疲れ様です」
エクセレン「あら?  どうしたの、クスハちゃん?」
クスハ「アラド君とラミアさんが ここで特訓をしてるって聞いたので、 飲み物を持ってきたんです」
エクセレン「!!」
キョウスケ「…馬鹿な…!」
カチーナ「な、何だと!?」
ラミア「……?」
リュウセイ「ク、クスハ…… ま、まさか、その飲み物って……」
クスハ「うん、特製の栄養ドリンクよ」
アラド「すみません、少尉。 わざわざおれ達のために」
リュウセイ「ヤ……ヤバいぞ、お前」
アラド「え? 何が?」
ラミア(どういうことだ?  あの飲料には毒物が混入されている…?  いや、状況的にあり得ん)
クスハ「今回は味の方も自信作なの。 リュウセイ君も飲んでみる?」
リュウセイ「い、いや、遠慮しとく……」
カチーナ「あ、あたしもな」
エクセレン「わ…私とキョウスケは缶コーヒーで 全然オッケーなんで…ねえ」
クスハ「そ、そうですか……」
アラド「じゃあ、俺……いっただきま~す!」
リュウセイ「あ、待て!」
アラド「う!!」
ラミア「!?」
エクセレン「ア、アラド君!?」
アラド「う……」
アラド「うまい……うますぎる……! もう一杯!」
リュウセイ「へっ!?」
カチーナ「ホ、ホントかよ!?」
アラド「ええ、喉ごしも スッキリ爽やか何とやらで」
クスハ「良かったら、ラミアさんもどうぞ」
ラミア「……」
ラミア(クスハ・ミズハ…… データによれば、ブルックリン少尉らと 同じく念動力者……)
ラミア(もしや、 私の正体に勘づいて……?)
ラミア(考えられる。 アラド曹長の飲み物に異常は なかったが、私の方には……)
クスハ「あ、あの……?」
ラミア(やむを得んな…。 ここでベーオウルフ達に疑われるわけにはいかん)
ラミア(何か混入されていたとしても… 後で解毒剤を調合すれば済む話だ)
クスハ「あの、無理をして 飲んでいただかなくても結構ですから……」
ラミア「いや、もらおう」
ラミア「……」
ラミア「む!?」
キョウスケ「ラミア?」
ラミア「う……!」
(ラミアが倒れる)
クスハ「ああっ、ラミアさん!?」
カチーナ「た、倒れやがったぞ!」
エクセレン「わお、やっぱり必殺…!」

[ハガネ 格納庫]

ヴィレッタ「……なるほど。 さっきの騒ぎはそれが原因か」
リュウセイ「ああ…… アラドは平気だったけど」
エクセレン「あの子、 胃袋の方も頑丈みたいね」
マサキ「単に味オンチなだけじゃねえか?」
クロ「言えてるニャ」
クスハ「……私、栄養ドリンクを 作るのをもう止めます……」
エクセレン「まあまあ、ラミアちゃんは すぐに気がついたんだし、アレの 効果はバッチリなんだから……」
シロ「そう言えば、 マサキも前にアレを飲んだ後、 調子が良くニャったもんニャ」
マサキ「ま、 後は味の方さえ何とかなりゃな」
リュウセイ「けど、アレ…… 混ぜてる物が物だけになぁ」
エクセレン「だから、 ブリット君あたりを毒味役にして、 頑張りなさいな」
クスハ「ど、毒味役……」
ライ「それで、クスハ、マサキ……。 俺に話とは?」
マサキ「おっと、いけねえ。そうだった」
クスハ「実は…… 私達がテスラ研を脱出する時、 ライさんのお兄さんに会ったんです」
ライ「! エルザムに……?」
リュウセイ「ホ、ホントかよ?」
マサキ「ああ。 レーツェル・ファインシュメッカーとか 名乗って、格好も違ってたけどよ」
クスハ「そして、あの人は 黒いヒュッケバインMk-IIIで 私達を助けてくれたんです」
リュウセイ「黒いMk-IIIって、 タイプRのことか? でも、あれ…… マオ社に行った時にはなかったけど」
ヴィレッタ「重力下でのテスト中だと 聞いていたが……エルザム少佐が それを担当していたらしいな」
ヴィレッタ「そして、ギリアム少佐が 言っていた機体引きあげの手段とは、彼のことか」
エクセレン「で…その色男さんのアニキは今どこに?」
マサキ「参式の2号機を誰かに届けると言って、 どっかへ行っちまったぜ」
リュウセイ「2号機って、新型の斬艦刀を 装備してる奴だよな?」
クスハ「ええ……」
エクセレン「じゃあ、ボス用の機体…ってこと?」
クスハ「私は2号機の調整には 関わってなかったんですけど…… 多分そうだと思います」
リュウセイ「じゃあ、 例の斬艦刀ドリルロボに乗ってる奴は……?」
エクセレン「まさか、 敵に参式を渡しに行くってわけは ないでしょうしねぇ……」
ライ「……」
ライ(エルザムの目的は ヴォーダン・ユミルの調査……)
ライ(それとも、ノイエDCにいる アーチボルド・グリムズを……?)
(通信)
テツヤ「パイロット各員へ伝達。 直ちにブリーフィングルームへ集合せよ」
テツヤ「繰り返す。パイロット各員は 直ちにブリーフィングルームへ集合せよ」
ヴィレッタ「招集がかかったわね。 行きましょう」
ライ「了解です」

[シロガネ ブリッジ]

リー「敵に動きがあっただと?」
一般兵「はい。偵察機が ポイントN1008付近でノイエDCの 物らしき機影をキャッチしました」
リー「N1008…… このアビアノから近いな」
一般兵「なお、ハガネとヒリュウ改から 何機か偵察に出すとのことです」
リー「その中に ラミア・ラブレスとアラド・バランガは 含まれているか?」
一般兵「はい」
リー(ふん、身元不詳の者やノイエDCの 離反者を偵察に出すとは……)
リー(やはり、彼らは甘すぎるな)


第26話
現れた『影』

〔戦域:川辺〕

(アンジュルグとアルブレードが出現)
アラド「……R1101ポイントに 到達。現時点で特に異常なし……と」
ラミア「……」
アラド「あの……大丈夫ッスか、 ラミアさん?」
ラミア「ああ、 消化系の機能に異常はない」
アラド「き、機能?」
ラミア(しかし……何故だ?  筋肉系の疲労が回復している。 それどころか、活性化も……)
ラミア(あの飲料…… 私にまでこのような効果が出るとは 侮れんな。…また飲みたいとは思わんが)
(アラート)
ラミア「!!」
アラド「ね、熱源反応!?」
ラミア「敵か!」
(ビルトファルケンと量産型ゲシュペンストMk-IIが出現)
アラド「ビ、ビルトファルケン!!」
ゼオラ「あれはR-1の量産試作機に SMSCアンジュルグ……!」
アラド「ま、まさか…… ゼオラが乗ってんのか!?」
ゼオラ「あの2体がここにいるのなら、 ハガネも近くにいるはず!  すぐにアクセル隊長へ報告して!」
Sミラー兵「了解!」
ラミア(本体のゲシュペンストか。 だが、まだ帰還命令は来ていない…。 まだこちらにいろということか?)
アラド「つ、通信! 通信を!!」
ラミア「アラド曹長…!? 何をする気だ?」
アラド「あれには ゼオラが乗ってるかも知れねえ!」
アラド「あいつにおれが生きてるって 知らせなきゃ!!」
ラミア(こいつ… ラトゥーニ・スゥボータと同じことをする つもりか? 理解に苦しむことばかりだな)
アラド「周波数、周波数は……!」
ラミア(指示がない以上、余計な接触は避ける べきか。…ASRS、Jモードで作動。 悪いが、ジャミングをかけさせてもらうぞ)
(アンジュルグに雑音)
アラド「な、何だ!?  通信が出来ねえぞ!」
ゼオラ(ハガネを ここへ誘き出せれば、 ラトを助けられる……!)
ゼオラ「各機へ!  アンジュルグには手を出さず、 R-1の量産試作機へ集中攻撃!」
アラド「こ、こうなったら、 接触して確かめるしかねえ!!」
(アルブレードが少し北へ移動)
ラミア(なぜ状況を考えん…。 確証も勝算もなく、自ら死に急ぐか)
アラド「ラミアさん、 ファルケンには手を出さねえでくれ!  あいつの相手はおれがする!」
アラド「あいつはおれが助ける!!」
ラミア「…好きにしろ。手出しはしない」
ラミア(疑問を持つ必要はない。 …でなければ、私はますますおかしくなる)
ラミア(今一瞬… アラド曹長を援護するべきかと考えたのも、 神経系の異常に…過ぎん…)
(作戦目的表示)

〈vs Sミラー兵〉

[アラド]

アラド「くそっ、邪魔するな!  おれをファルケンの所へ行かせろ!」

〈vs ゼオラ〉

[ラミア]

ゼオラ「仕掛けてきた……!  隊長が来るまでの時間を 稼がせてもらうわよ!」
ラミア(機密通信はなし、か。 なら、こちらの任務を継続する)

[アラド]

ゼオラ「この機体を落とせば、 ハガネはここへ来るはず!」
アラド「ま、待て!  そっちと戦う気はねえ!!」

〈アルブレードがビルトファルケンへ隣接〉

ゼオラ「何なの、こいつ!?  なれなれしいわねっ!!」
アラド「ゼオラッ!!」
ゼオラ「!  もしや、あなたは……!?」
アラド「そうだ、おれだ! アラドだ!  おれ、生きてんだよ!」
ゼオラ「アラド……!  アラド・バランガ!!」
アラド「!?」
ゼオラ「私やオウカ姉様の所から、 ラトを連れ去った男!  倒すべき私の敵!!」
アラド「な、何だって!?  お前、いったい何を……!?」
ゼオラ「あなたのせいでラトはっ!!」
(アルブレードに爆煙)
アラド「ぐあっ!!」
ラミア(…当然の結果だ。 今は敵と味方…それ以外の何者でもない)
アラド「な、何でだ……!?  何でおれを!?」
ゼオラ「許せない……!  あなただけは許せない!!」
アラド「ゼ、ゼオラ!  おれのことがわからねえのか!?」
アラド「ずっとお前とコンビを 組んでたおれのことがっ!!」
ゼオラ「あなたとコンビを!?  冗談じゃないわ!」
アラド「!?」
ゼオラ「あなたは私の敵!  そんなこと絶対にあり得ない!!」
アラド「なっ……!!」
ゼオラ「私は最初からシングル!  そして、ブロンゾクラスの27号、 ゼオラ・シュバイツァーよ!!」
アラド「ブ、ブロンゾ……!?  お、お前……その名前を……!」
ゼオラ「さあ、 ラトを連れ去った罪を その命で償いなさい!!」
アラド「お前…… ま、まさか、アギラばあさんに!?」
ラミア(…手を出す必要はない。私は… 何もしない…)
(アンジュルグにアラート)
ラミア「! この反応は!?」
(敵機が出現)
アラド「て、敵の増援かよ!!」
アクセル「……上手くハガネの機体を 見つけたようだな、ゼオラ」
ゼオラ「はっ!」
ラミア「あれは……?」
アクセル「あの機影はSMSCアンジュルグ… まさかさっそくW17を見つけるとはな」
(アンジュルグに機密通信)
ラミア「機密通信……。 このコードは……アクセル隊長か」
アクセル「…こちらアクセル・アルマー。 W17、ハガネやヒリュウ改の連中に、 おれ達が現れたことを報告したのか?」
ラミア「やっとりますです。 目的はあの艦をここへ誘き出しちゃうこと なんでございますのことなのですかね?」
アクセル「ん…? W17… 貴様、ふざけているのか?  それとも敵に改造でもされたか?」
ラミア「…いえ。まっこと申し訳ない こってすが、言語系に機能不全が 出ておったりしとりまして…」
ラミア「敬語だけ上手く使えなかったり しちゃうの」
アクセル「…何をやってるんだ、貴様は。 そんな状態で任務が遂行できているとは 思えんな。…とりあえず敬語はいい」
ラミア「了解」
ラミア「では隊長… なぜお前が、直接ここまで来る必要が あった?」
アクセル「ようやく動けるように なったんでな。人任せは性に合わん… だから直接見に来た、これがな」
アクセル「ハガネやヒリュウ改… そして貴様をな。 貴様はさっそくがっかりさせてくれたが」
ラミア「すまんな、隊長。 ちなみにハガネにヒリュウ…… 着実に戦力を蓄えつつある」
ラミア「このままでは、あの時と同じ結果に なりかねんぞ」
アラド「ラ、ラミアさん!  何やってんだ!?」
アクセル「…あの時と同じ結果、か。 だが、今の貴様は信用ならん。直接 確かめねばな」
ラミア「……」
アクセル「奴らが来るまでの間…相手を してもらおう。…貴様だけが、性能テストの 際におれと引き分けた」
アクセル「壊れているのは言語系だけだと、 証明して見せろ」
アクセル「これは命令だ。 …そう言った方が、貴様らWシリーズには わかりやすいはずだ、これがな」
ラミア(…命令…。 しかし、ここで私が隊長と やり合えば、アラド曹長が…)
ラミア(……ッ! いや、私は何を…?  隊長からの直々の命令に対して、一瞬とは いえ…優先順位に疑問を持っただと…!?)
ラミア(レモン様… 私の体に何が起こっていると 言うのです…!?)
アクセル「各機へ。W17の相手はおれが する。貴様らは指示があるまで動くな。 …警戒だけは怠らんようにな」
Sミラー兵「了解!」
ゼオラ「隊長、 私はアラド・バランガを……!」
アクセル「…好きにしてかまわん。 それも前衛の仕事だと言えなくも ないからな」
ゼオラ「はっ!」
アクセル(…不安定すぎるな。 そういう意味では、Wシリーズの方が 戦争には向いているのかもしれん)
(ビルトファルケンに『加速』)
アクセル「……行くぞ、W17。 本気でかかってこい……!」
ラミア「了解」
(作戦目的表示)

〈vs ゼオラ〉

[アラド]

アラド「ゼオラ!  お前、アギラばあさんに 何を吹き込まれたんだ!?」
ゼオラ「わけのわからないことを 言わないで!」
アラド「おれだって、 スクールにいたんだぞ!  お前と一緒にいたんだぞ!!」
アラド「それに、おれはラトを 連れ去ったりなんかしてねえ!!」
ゼオラ「そんなことを言って……!  だまされないわよ!」
アラド「おかしいとは思わないのか!?  なんでおれがお前やスクールのことを 知ってるのかって!」
ゼオラ「ラトから聞いたんでしょう!  そうに決まってるわ!」
アラド(言ってることが変だ……!  やっぱり、ラトが言った通り オウカ姉さんと同じで……!?)
ゼオラ「私はあなたを倒し、 ラトを母様の所へ連れ戻す!  さあ、覚悟なさいっ!!」
アラド「か、母様!? お、お前…… アギラばあさんのことを……!?」

〈vsアクセル〉

[ラミア]

ラミア「隊長、私もいつか勝負を付ける べきだと思っていた。…覚悟してもらう」
アクセル「おれを相手によく言った。 だが、まだ人形に遅れをとりはしない、 こいつがな」

〈ラーズアングリフのHP80%以下 or アクセル達出現から3 NEXT PP〉

(アラート)
アクセル「む? 来たか」
(ハガネ、ヒリュウ改、シロガネ、アルトアイゼン、ヴァイスリッターが出現)
アラド「あ、あれは!!」
キョウスケ「無事か? アラド、ラミア」
アラド「キョ、キョウスケ中尉!」
エクセレン「お待たせしちゃってごめん してね。前のお客さんから延長 入っちゃって…」
ラミア「エクセ姉様… 意味がわかりゃしませんのですで ありますけど…」
ダイテツ「各機、直ちに出撃せよ!」
(出撃準備)
アラド「こ、これで何とか……」
リー「アラド・バランガ…… やはり敵との接触を図ったか」
アラド「え!?」
リュウセイ「な、なに言ってんだ!  あいつは……!」
リー「貴様の意見など聞いていない。 見ての通り、アラド・バランガは ノイエDCのスパイだった」
リー「故にここで奴を処分する」
リュウセイ「なっ……!」
ブリット「中佐、本気でそんなことを 言ってるんですか!?」
リー「そうだ。 ……まったく、貴様らの考えの 甘さには虫唾が走る」
リー「この状況下で、敵からの離反者を 偵察に出すなどと……」
カチーナ「ケッ! 虫唾が走るのは てめえの頭の堅さの方だぜ!!」
リー「あの状況を把握できぬ者が 何を言うか。現にアラド・バランガは 自ら通信を断ったのだぞ」
アラド「ち、違う! それは……!!」
リー「機体を損傷させたとて、 私はだまされんぞ」
マサキ「あの野郎、 あれが演技だって言うのか!?」
リューネ「状況を把握できてないのは あんたの方じゃないのさ!」
リー「部外者は黙っていろ」
マサキ「何だと!?」
リー「フン……民間の協力者風情が」
テツヤ「やめろ、リー!  今はそんなことを言っている 場合じゃない!」
リー「それが 上官に対する態度か、テツヤ?  下が下なら、上も上だな」
テツヤ「何っ!?」
リー「貴様の認識の甘さが 奴らを増長させているのだ」
リー「やはり、 貴様は指揮官としては失格…… せいぜいナンバー2止まりの男だ」
テツヤ「お前にそんなことを 言われる筋合いはない!」
レフィーナ「あ、あの……!」
ダイテツ「いい加減にせんか!  馬鹿者共がッ!!」
リー「!」
テツヤ「!」
ショーン(……落ちましたな、雷が)
ダイテツ「この状況下で 己の成すべきことを忘れ、 口論するとは何事だ!」
テツヤ「も、申し訳ありません……!」
ダイテツ「直ちに攻撃開始!  アルブレードとアンジュルグを 救助し、敵を撃破せよ!」
リー「……了解」
カイ「アラド、ラミア。すぐにそこから 離脱し、こちらと合流しろ」
アラド「で、でも、ゼオラが!  ゼオラがいるんです!!」
カイ「何……!?」
ラトゥーニ「ま、まさか、 あのファルケンに……!?」
ゼオラ「……」
アラド「あ、ああ! けど、あいつ…… おれを敵だと思い込んでる!」
ラトゥーニ「!」
アラド「それに、おれと一緒にいた 記憶がねえみたいなんだ!」
ラトゥーニ「え……っ!?」
リュウセイ「も、もしかして……!」
ラトゥーニ「記憶操作を 受けているの……!?」
キョウスケ「…エクセレン、おれ達で先陣を 務めるぞ」
エクセレン「はいな。ちょ~っと状況が複雑 そうだしね。荒事に慣れてる私達の方が いいでしょ」
キョウスケ「慣れたくて慣れてるんじゃ ないがな。…ラミアはともかく、アラドは 満足に戦えんはずだ。急ぐぞ」
アクセル「あれは…間違いない。 機体色こそ違うが… ゲシュペンストMk-III…!」
アクセル「…W17に続いて、おれには ツキがあるらしいな」
アクセル「『こちら側』の貴様に恨みが あるわけではないが…同じ存在に ならんとも限らん」
アクセル(己が道を行き、すべてのバランスを 崩すイレギュラー…『こちら側』の貴様は どうだ? …キョウスケ・ナンブ…!)
キョウスケ「……」
カイ「キョウスケ中尉、 フォワードはお前達に任せる!」
キョウスケ「了解」
アクセル「全機、ターゲット変更」
アクセル「ただし、ベーオウルフ… ゲシュペンストMk-IIIには手を出すな。 奴の相手はおれがする」
(アンジュルグにアラート)
アクセル「!」
ラミア「こ、この反応は!?」
ユン「か、艦長!!  前方に空間転移反応が!!」
レフィーナ「転移反応!?」
ダイテツ「アインスト……!  いや、インスペクターか!?」
エイタ「いえ!  そのどちらの反応でもありません!」
ダイテツ「何だと!?」
アクセル(…もう来たか。ヴィンデル…!)
(ツヴァイザーゲインが転移出現)
ラミア「間違いない、あれは……!!」
リオ「て、転移してきた!?」
ヴィンデル「……あれがそうか。 なるほど、我々の世界よりも 戦力は充実しているようだな」
アイビス「あれ、インスペクターの 機動兵器なの……!?」
リューネ「でも、ホワイトスターで あんな機体は見てないよ!」
レオナ「フォルムは アインストシリーズの物と違う……」
ヴィレッタ(そして、 エアロゲイターの機動兵器でもない)
リョウト「でも、転移技術を 持っているということは……」
タスク「まさか、新顔の異星人かよ!?」
マサキ「いや、怪しい技術絡みなら…… シュウと関係のある奴かも知れねえ」
イルム「何とも言えんね。 ただ、敵だってのは間違いないな」
ヴィンデル「面食らっているようだな。 無理もなかろう」
アクセル「早かったな、ヴィンデル。 …『システムXN』の調子は?」
ヴィンデル「通常転移は安定している」
ラミア「やはり、 ツヴァイザーゲインか……!」
ヴィンデル「アンジュルグ… 乗っているのはW17か? アクセル」
アクセル「そうだ。 転移の影響か知らんが、少しおかしい。 …いきなり怒鳴るなよ? ヴィンデル」
ヴィンデル「……?」
(アンジュルグに機密通信)
ラミア「ヴィンデル様…その機体…まさか 完成しちゃったりしてなかったりしたり しなかったりしちゃうのでしょうですか?」
ヴィンデル「…なに…?  レモンの遊び道具ごときが、私に対して…」
アクセル「言ったろ? おかしいってな。 …言語系がやられているらしい。言葉遣いは 気にするな。血圧が上がるぞ、こいつは」
アクセル「W17、普通にしゃべって構わん」
ラミア「了解」
ラミア「……ヴィンデル様。 ツヴァイザーゲイン…安定しているように 見えるが、まさか完成したというのか?」
ヴィンデル「その通りだ。見ての通り、 通常転移機能に問題はない」
ラミア「つまり、お前達本隊が動く…と?」
アクセル「そういうことだ。こいつがな。 これから指令も多くなるだろう」
アクセル「レモンは貴様に期待している。 …そのザマを見る限り、おれは心配だが… 任務遂行に全力を尽くせ」
ラミア「ああ、わかっている…」
ラミア(指令が来れば、私の任務も やりやすくなる…だが、安心感が わかないのは…なぜだ?)
ラミア(少し前までは、 あれほど指令を待ち望んでいたと いうのに…)
ラミア(もしや…情緒を司る感情中枢も 破損しているというのか…?)
キョウスケ「奴らは何をしている……?」
ライ「……ラミアの様子がおかしい」
エクセレン「そうねえ…。 ラミアちゃん、どうかしたの?  戦闘中なんだけど?」
ラミア「…いかんな、これ以上の戦闘遅延は 不自然だ。一度交戦すべきだと思うが、 どうだ?」
アクセル(…ん? Wナンバーの方から…?)
ヴィンデル「人形に方から、 私に指示をするとはな」
ヴィンデル「だが、ツヴァイの実戦テストも 兼ねて、ここまでやって来たのだ。 W17…付き合ってもらうぞ」
ヴィンデル「それにトラブルとはいえ、人形 ごときに不遜な口の利き方をされるのは 不愉快でな」
ラミア「…すまんな」
アクセル「フッ…レモンは喜びそうだがな」
ヴィンデル「アクセル、 お前はゼオラ曹長と共に戻れ」
アクセル「なんだと? 何故だ?」
ヴィンデル「ベーオウルフが絡んでくると、 お前は冷静さを失う傾向がある」
アクセル「…『向こう側』と『こちら側』の 奴は違う。おれだって、それくらいの ことは…」
ヴィンデル「大事をとってだ、アクセル。 この段階でしくじるわけにはいかんのだ。 …お前を失うわけにもな」
アクセル「……」
ゼオラ「し、しかし、 それでは私に与えられた命令を 遂行することが出来ません!」
アクセル「ゼオラ曹長、ここは命令に従え。 自分で考え、どちらの命令に従うべきか 決めろ。…自分で、だ」
ゼオラ「え……?」
ヴィンデル「機会は別に与えてやる。 今回は私の命令に従え。いいな?」
ゼオラ「……」
アクセル「…ベーオウルフ、か」
ヴィンデル「アクセル… お前の敵は、あの男ではない。 …理解していると、自分で言っていたな?」
アクセル「……」
アクセル「…わかっているさ、これがな。 後は任せるぞ、ヴィンデル」
アクセル(ここでツヴァイに敗れるなら… 『こちら側』の奴はその程度…気にする 必要もない)
(ランドグリーズが西端へ移動し消える)
ゼオラ「くっ……!  ラト、連れて帰ってあげられなくて ごめん……!」
(ビルトファルケンが西端へ移動し消える)
ラトゥーニ「ゼオラ!?」
アラド「ゼ、ゼオラーッ!!」
ラミア(退いたか、アクセル隊長……)
ヴィンデル「……システムXNの 復元によって、我々はいよいよ 動き出すことが出来る……」
ヴィンデル「我らの手によって 再び『アギュイエウスの扉』が 開かれるのだ」
ラミア「……」
ヴィンデル「こちら側では あの時のような不覚はとらんぞ、 ハガネ、そしてヒリュウ改の者共よ」
ラミア「連邦軍特別任務実行部隊 『シャドウミラー』指揮官、 ヴィンデル・マウザー大佐……」
ヴィンデル「…む?」
ラミア「…来い。実戦テストをするのだろう?  私は機嫌が悪い…お前達のやり方を見て いると…なぜか神経系にノイズが混ざる…」
ラミア「何があっても恨まないで もらおう…!」
ヴィンデル「人形風情が面白いことを言う… W17!」
(作戦目的表示)

〈vs ヴィンデル〉

[キョウスケ]

キョウスケ「量産型のゲシュペンスト、 アルブレード、ヴォーダンという男、 空間転移…」
キョウスケ「そしてこいつが、ノイエDCの 謎について答えを握っているようだな」
ヴィンデル(『こちら側』のお前の力… 見せてもらうぞ、ベーオウルフ…!)

[エクセレン]

エクセレン「妙に仰々しい機体ねぇ。 もしかして、ボスキャラだったりして」
ヴィンデル(何だ? この女は……)

[ラミア]

ヴィンデル「W17…… レモンはお前のことを 気に入っているようだが……」
ヴィンデル「私は自分で 確かめたことしか信じないのでな。 ……最新型の性能、見せてもらおう」
ラミア「その最新型も…… どうやらおかしくなり始めたらしい」
ヴィンデル「……?」
ラミア(レモン様… 単に私は欠陥品なだけですか…?  それとも…)

[ヴィレッタ]

ヴィレッタ(この機体…… マスタッシュマンに似ている?)
ヴィレッタ(もしや、 ギリアム少佐の調査対象とは……)

[アラド]

アラド「こいつが 今のゼオラの上官か!?」
ヴィンデル「……」
アラド「だけど、こんなメカ クレイドルじゃ見たことねえぞ!!」
ヴィンデル(……セトメ博士の実験体が 奴ら側へ寝返っていたとはな)
ヴィンデル(我らのことは 何も知らぬだろうが…… ここで始末しておくべきか)

[アイビス]

アイビス「こいつらを何とかしなくちゃ、 テスラ研にいるフィリオ達を 助けにいくことが出来ないんだ!」
ヴィンデルプロジェクトTDの機体か。 これが奴らの手中にあるとは……。 ローズめ、何を考えている?)

[マサキ]

マサキ「てめえ! まさかシュウと 関係があるんじゃねえだろうな!?」
ヴィンデル(……魔装機神サイバスターか。 インスペクターが現れた以上、 こちらにいるのは当然だな)
マサキ「おい! 何とか言いやがれ!」

[リューネ]

リューネ「あんたも、 そこのPT部隊と同じで、 ノイエDCなのかい!?」
ヴィンデル(ヴァルシオーネ…… やはり、こちらでもノイエDCには 与していないか)

[イルム]

イルム「どうも今回は 空間転移装置が流行りのようだな」
ヴィンデル「……」
イルム「まさか、 独自に開発したわけじゃあるまい。 そいつをどこで手に入れた?」
ヴィンデル(フッ…… あながち間違ってはいないがな)

〈ツヴァイザーゲイン以外の敵機全滅 or ツヴァイザーゲインのHP90%以下〉

ヴィンデル「なるほど。 やはり、こちらでも我々の前に 立ち塞がるのはこいつらか」
ヴィンデル「だが、おかげで ツヴァイの慣らしとしては上々だ」
ラミア「私は……」
ヴィンデル「待つがいい。もう少しだ。 我々の世界でなし得なかったこと…… こちらでは可能にしてみせよう」
ヴィンデル「いいな、W17。 次の指示を待て」
(ツヴァイザーゲインが転移撤退、敵が残っていれば他の敵も転移撤退)
クスハ「き、消えた……!」
ライ「それも転移で、か」
ヴィレッタ「あの機体は 単独での空間転移が可能なようね」
ラッセル「インスペクターの機体の中に それを行ったものはいません……。 もしかして、あれは第三の……?」
イルム「いや……多分、地球人だろう。 ゲシュペンストやアルブレードが 奴に従っているようだったからな」
ラミア(その通り……地球人だ。 私は……違うがな)

[地球連邦軍アビアノ基地 格納庫]

ラーダ「……ラトゥーニ、あなたには 非常に聞きづらいことなんだけど……」
ラーダ「スクールでは やはりあの手の記憶操作が よく行われていたの……?」
ラトゥーニ「はい……。 ひどい例では、人格そのものを 変えられてしまった仲間も……」
リュウセイ「何だって……!?」
ブリット「そ、そこまでやるのか……」
ラトゥーニ「でも、 自分では記憶を変えられたことがわからない……」
ラトゥーニ「私も……もしかしたら」
ラーダ「ラトゥーニ……」
ラトゥーニ「けど、私はまだまし……。 オウカ姉様やアラド、ゼオラ達との 記憶があるから……」
ラトゥーニ「それに、みんなと出会えたし…… みんなとの思い出は大切なものになったから……」
ラトゥーニ「でも、ゼオラは……」
リュウセイ「……あの子の記憶は もう元に戻らないのか?」
ラトゥーニ「……わからない……」
(扉が開閉する)
アラド「大丈夫だよ、ラト。 おれが何とかしてみせるって」
ラトゥーニ「アラド……」
ブリット「何とかするって……どうやって?」
アラド「それは わからないッスけど……」
アラド「おれ…… 諦めるわけにはいかないんです。 あいつとの約束を守るためにも」
ラーダ「アラド…… 彼女は完全に変わってしまっていたの?」
アラド「俺に関する記憶は そうだったみたいッスけど……」
アラド「すぐにカッとなる所とか、 融通の利かない所とかは同じで…… ラトのことも覚えてたし……」
ラーダ「……じゃあ、 彼女の記憶を元に戻すことが 出来るかも知れないわ」
アラド「え!? 本当ッスか!?」
ラーダ「ええ。 おそらく、彼女が受けているのは 暗示系の記憶操作よ」
リュウセイ「暗示系……?」
ラーダ「人格や記憶を完全に 作りかえてしまうのではなく……」
ラーダ「元からあるものに 何からのイメージを加え、内容を変える方法……」
ブリット「催眠術みたいなものなんですか?」
ラーダ「概念的には似ているわ。 だから、与えられたイメージ……」
ラーダ「彼女の記憶を 歪めている原因となっているものを 取り除けば……」
アラド「……」
リュウセイ「……ブリット、あの時に似てるな」
ブリット「ああ。あの時のそれは…… 弐式のT-LINKシステムだった」
アラド「ど、どういうことなんです?」
リュウセイ「前例があるってこった。 それも、成功例」
ブリット「だから……今回もきっと上手くいくよ」
アラド「……」
リュウセイ「アラド、ラトゥーニ…… お前達の姉さんと一緒に、あの子も スクールから助けてやろうぜ」
リュウセイ「……本当の意味でな」
アラド「はい」
ラトゥーニ「うん……」

[アビアノ基地 ブリーフィングルーム]

カチーナ「それにしても…… さっきの角メカは何モンなんだよ?」
ヴィレッタ「機体の感じは マスタッシュマンに似ていたわね」
カチーナ「マスタッシュマン?」
エクセレン「『ヒゲ男ちゃん』って意味ね」
ライ「隊長、それは……?」
ヴィレッタ「オペレーションSRWの時、 私達とは別の戦闘宙域で確認された 所属不明の人型機動兵器よ」
カチーナ「そんな奴が あの時の戦場にいやがったのか?」
エクセレン「所属不明…?  …ってことはヴィレッタお姉様、そのヒゲちゃんは 地球の物でも、エアロゲイターの物でもない…?」
ヴィレッタ「いえ、マスタッシュマンは エアロゲイターの機動兵器と 戦闘を行っていたそうよ」
ヴィレッタ「そのことから判断すれば、 地球製である可能性が遥かに高いわ」
カチーナ「今、そのヒゲ野郎は どこにいるんだ?」
ヴィレッタ「オペレーションSRW後、 行方不明になり……現在もその消息は つかめていない」
エクセレン「ん~、今回の事件はアインストも含め、 謎だらけで奥が深そうねぇ」
キョウスケ「謎が解けないまま、積み重なって いっているのは問題だがな」
キョウスケ「だが、さっきの連中は ノイエDC軍とは違う。…それだけは明らかだ」
ライ「……」
ライ(あの特機が現れた時…… ラミアの様子がおかしかった)
ライ(もしや……?)

[ハガネ 艦長室]

テツヤ「……艦長、 先程は申し訳ありませんでした」
テツヤ「リー中佐が言う通り…… 自分は指揮官として失格です」
ダイテツ「……指揮官クラスの 揉め事は部隊の士気だけでなく、 戦局にも影響する」
ダイテツ「そのことを忘れるな」
テツヤ「は、はい」
ダイテツ「ところで、話は変わるが……」
ダイテツ「大尉、 今回の件が落ち着いたら、お前には ハガネから降りてもらうことになる」
テツヤ「は!?  そ、それはいったい……!?」
ダイテツ「これはあくまでも月の奪還に 成功した場合の話だが……」
ダイテツ「お前にスペースノア級の 第四番から陸番艦、そのいずれかの 艦長を務めてもらおうと思っている」
テツヤ「じ、自分が…… スペースノア級の艦長に!?」
ダイテツ「そうだ。 お前はワシの下でDC戦争L5戦役と 充分な経験を積んできた……」
ダイテツ「そして、 スペースノア級を任せられる人間に 成長しつつあると思っておる」
テツヤ「じ、自分はまだそんな……」
ダイテツ「謙遜することはない。 それに、同期のリー中佐もシロガネの 艦長に就任しているではないか」
テツヤ「……」
ダイテツ「不服なのか?」
テツヤ「い、いえ、そんなことは。 しかし、自分はハガネに愛着がありますし……」
テツヤ「まだ艦長の下で多くのことを 学びたいと思っております」
ダイテツ「雛鳥はいつか親鳥の下から 飛び立たねばならん。 それはお前とて例外ではない」
テツヤ「……」
ダイテツ「自信を持て、大尉。 そして、以後はそのつもりで 任務に就け。いいな?」
テツヤ「……わかりました」

[ハガネ 格納庫]

ラミア(機密通信装置、機能確認……)
(機密通信)
ラミア(よし、問題ない。 これで確実に指令を受けることができる)
ラミア(アクセル隊長にも、ヴィンデル様にも… もう人形などとは言わせん)
ラミア「………」
ラミア(…いや、それこそが人形ということか)
ラミア(言語系、神経系、感情中枢… Wナンバーの最高傑作が聞いて呆れる… 私はただの欠陥品のようです…レモン様…)


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