ムラタ「おのれ!
この俺がここまで追い込まれるとは!」
リシュウ「観念せい、ムラタ」
ムラタ「まだ終わらん……!
まだ斬り足りん……!」
ムラタ「俺の剣は、
まだここでは折れん!!」
(ガーリオン・カスタム“無明”が撤退)
リシュウ「………」
カイル「くそっ……!
俺に攻撃を集中させてくるとは!」
カイル「かくなる上は、あれを……!
あれを使うしかない!」
セルシア「もうやめて、カイル!
これ以上戦ったら、あなた達は!」
カイル「……!」
カイル「そう……だな、セルシア。
俺はここで終わるわけにはいかん」
カイル「今はまだ、“捨てる”時ではない。
機会を改めるべきか」
セルシア「えっ!?」
マサキ「てめえら、逃げる気か!?」
カイル「フン……俺達のシステムは、
もう“学習”を始めている」
カイル「貴様らとの戦いで、
ミロンガやバルトールの性能は
上がっていくのだ」
マサキ「どういうことだ!?」
カイル「フッ……いずれわかる」
セルシア「カイル!!」
カイル「セルシア、俺は決して諦めん。
あの日、味わった絶望こそが
俺の力だからな……!」
(ミロンガが撤退)
リューネ「くっ、逃がすもんか!」
ツグミ「深追いしては駄目よ、リューネ。
こちらの被害も大きいしね」
ツグミ「まずは事態を把握するためにも
セルシアから話を聞きましょう」
セルシア「………」
ツグミ「なるほど……
そういうことだったのね、セルシア」
セルシア「………」
ツグミ「話してくれてありがとう」
マサキ「おい……それだけで済ます気かよ?」
セルシア「……!」
マサキ「この女の仲間達のおかげで、
テスラ研以外の所も被害を受けてんだろ?」
ロバート「ああ……。
極東ではバルトールが多くの人々を拉致したそうだ」
セルシア「さらわれた人々は、
ODEシステムの生体コアとして
使用されるのでしょう……」
ツグミ「有機伝達系のパーツになるということね……」
アイビス「それって……
つまり、生体コアにされた人は
死んじゃうってこと……!?」
ツグミ「脳の伝達系が使用される以上、
生命は維持されるとは思うけど……」
ツグミ「思考も行動の自由も奪われた以上、
それはもう『人間』と呼べない状態になるでしょうね」
セルシア「ええ……消耗して稼働率が落ちれば、
破棄されるパーツに……」
マサキ「冗談じゃねえッ!!」
セルシア「!」
マサキ「どんなお題目があるか知らねえが!
勝手な理屈で街を焼き、命を道具にするような奴らを
俺は許しちゃおけねえ!」
マサキ「そして、この女もその連中の一味だ!」
セルシア「………」
クロ「ちょ、ちょっと、マサキ!
落ち着きニャさいよ!」
マサキ「るせえ!
こいつら、人間を消耗品扱いしてんだぞ!!
それを許せるか!」
アイビス「でも、マサキ……
セルシアさんは、あのカイルって奴に
利用されていただけだし……」
リューネ「そうだよ。
最後はあたし達に協力してくれたじゃない」
マサキ「だからって、
俺はこの女を許す気にはなれねえな!
行くぞ、クロ、シロ!」
シロ「あ! 待つニャ、マサキ!」
(扉が開閉する・マサキ、クロ、シロが立ち去る)
リシュウ「あやつ……随分と荒れとるのう」
リューネ「前に聞いたことがある……。
マサキは両親をテロで亡くしたって……」
ツグミ「だから、あのカイル達の仲間だった
セルシアを許せないのね……」
セルシア「彼の怒りも当然です……。
そして、その気持ちも理解できます。
私も……大切な人を戦いの中で失いましたから……」
アイビス「え……」
セルシア「ダイアンという名は、
エアロゲイターの襲撃で命を落とした
私の友人のものなんです……」
アイビス「セルシアさん……」
セルシア「この腕の中で冷たくなっていく
ダイアンを見ながら、私は戦争を恐れ、
憎みました……」
セルシア「そして、私がカイルへの協力を
決意したのは、理不尽に奪われる命を
守るためだったんです……」
セルシア「それなのに……
ODEシステムのコアとして
人間を使うなんて……」
リシュウ「命を守るために命を奪うとは……
矛盾した結末じゃな」
リューネ「それで、セルシア……
あんた、これからどうするつもりなの?」
セルシア「軍に出頭して全てを話し、
然るべき裁きを受けるつもりです…」
ツグミ「……その前にやってもらうことがあるわ。
あなたにしかできないことを」
セルシア「え……?」
ツグミ「大連にあるウォン重工業の本社……。
おそらく、そこが彼らの中枢……少なくとも
何らかの手がかりがあると思われるわ」
ツグミ「ODEシステムがデータを収集し、
その機能を強化させていくとしたら……
対処が遅れることは致命傷になる」
アイビス「じゃあ……」
ツグミ「先程、ギリアム少佐から連絡があって……
ハガネが大連へ向かうそうよ」
ツグミ「でも、あの艦は敵の目につきやすいから、
何らかの妨害を受けることになる。
だから、私達は独自に大連へ向かいましょう」
リューネ「了解。
DCが関わっていたって聞いちゃ、
あたしも黙ってられないしね」
ツグミ「そして、セルシア……
あなたは私達と一緒に来てもらうわ」
セルシア「え……?」
ツグミ「出頭するのは後でも出来ます。
でも、今は少しでもODEシステムの情報が
必要なの」
ツグミ「だから、あなたにはアドバイザーとして
私達に同行してもらいたいの」
セルシア「私が……?」
ツグミ「選択はあなたに任せるわ。
私達と一緒に大連へ行くか、
このまま軍へ出頭するか……」
セルシア「行きます……
私を大連へ連れて行って下さい……!」
アイビス「セルシアさん……」
セルシア「知らなかったとは言え、
私がしたことは許されるものではありません。
でも……でも……!」
セルシア「だからこそ、
私はカイル達を止めたいんです……!
手遅れになる前に……」
リューネ「行こう、セルシア。
そして、あんたを利用した奴らを
とっちめてやろうよ」
アイビス「今のあたし達には
あなたが必要なんです!
一緒に行きましょう!」
セルシア「はい……。
例え許されなくとも、私は自分の罪を
仲間と共に償いたいと思います……」
ツグミ「では、決まりね。
……オオミヤ博士、テスラ研の留守をお願いします」
ロバート「お、おい……君も行くのか?」
ツグミ「ええ……。
アイビスがAXで戦うためには、
私のナビが必要でしょうから」
リシュウ「……ワシも往くぞ」
ロバート「せ、先生まで!?」
リシュウ「今回の件には、
ムラタも一枚噛んでおるからの……
放っておくわけにはいかん」
リシュウ「それに、
アイビス達に何かあっては、フィリオや
ジョナサンに合わせる顔がないからのう」
ロバート「わ、わかりました。
では、テスラ研のことは俺に任せて下さい」
リシュウ「頼むぞ」
ツグミ「そうと決まったら、急ぎましょう。
各機の整備と補給をすませて、
6時間後には大連へ向けて出発します」
アイビス「了解!」
(セルシア以外が立ち去る)
セルシア(カイル……。
あなたは変わってしまった……)
セルシア(私はそれに気づいていながら、
あなたに手を貸した……。
いつか、あの日のあなたに戻ると信じて……)
セルシア(でも、それは間違っていた……。
あなたを止められなかった罪を、私は償います……)
セルシア(あなたとODEシステムを
止めることで……)
(襖開閉音)
コウタ「……ただいま……」
ジャーダ「コ、コウタ! お前、今までどこに!?」
コウタ「……」
ガーネット「キサブローさん!
コウタが帰って来たよ!」
コウタ「…………」
ガーネット「お披露目会場で見失ってから、
ずっと心配してたのよ」
ジャーダ「何にせよ、お前が無事で良かったぜ……」
コウタ「うるせえ!」
ジャーダ「!」
コウタ「ちっとも良かねえよ!
ショウコがさらわれちまったってのに、
俺は……俺は……!」
キサブロー「やめんか、コウタ。
ジャーダとガーネットは、ずっとお前達を
心配しとったんじゃ」
キサブロー「二人はお前だけでも
無事だったことを喜んでくれとるんじゃ」
コウタ「………」
ジャーダ「いや……キサブローさん。
俺も悪かったんですよ。
コウタの気持ちも考えずに……」
ガーネット「ごめん……ごめんね、コウタ……。
あたし達がショウコを見失ったせいで……」
コウタ「……あんた達のせいじゃねえ。
俺が……俺が全て悪いんだ……」
コウタ「俺は
ショウコを守らなきゃならねえのに……
このていたらくだ」
ジャーダ「コウタ……」
キサブロー「ジャーダ、ガーネット……
済まんかったな」
キサブロー「もう夜も遅い……。
二人共、今日は家に帰るんじゃ」
ジャーダ「すんません……何の力にもなれなくて」
ガーネット「コウタ……自分を責めないでね。
悪いのは、あんたじゃないんだから……」
(襖開閉音・ガーネットとジャーダか立ち去る)
コウタ「………」
キサブロー「疲れたじゃろう、コウタ。
まずは風呂にでも入ってこい」
コウタ「……ショウコをさらったのは、
バルトールじゃねえ。この間の雷神野郎だ……」
キサブロー「知っておる。カイザーの動きは、
こちらでもある程度モニターしておったからな」
コウタ「雷神野郎を追って行ったら……
見たことのねえ変なロボットに邪魔されて……」
コウタ「黒いドリル戦艦とラウルって奴に
助けてもらったけど……結局、ショウコは……」
キサブロー「……そうか」
コウタ「教えてくれ、爺ちゃん!
ショウコをさらった奴らは、何者なんだ!?」
コウタ「爺ちゃんが言ってた
ロアを狙う敵だってのか!?」
コウタ「だったら、何故俺じゃなく
ショウコをさらうんだ!?」
キサブロー「落ち着け、コウタ。
ワシにも奴らの正体や目的はわからん」
コウタ「じゃあ、ロアならわかるのか!?
……おい、ロア! 聞いてんなら、答えろ!
てめえの知っていることを全部話しやがれ!!」
キサブロー「やめんか、コウタ。
長時間カイザーを稼動させた以上、
ロアには休息が必要じゃ」
コウタ「だけどよ!
俺はショウコを助けなきゃならねえんだ!
それには、あいつの力が必要なんだ!」
コウタ「相手が誰であろうと、
俺はショウコを守るんだ!!」
キサブロー「その覚悟……本気じゃな?」
コウタ「もちろんだ!」
キサブロー「ならば、ロアの使命を受け入れろ、コウタ。
それがショウコを救うことにつながるはずじゃ」
コウタ「爺ちゃん……!」
キサブロー「ロアは、こことは違う世界で生まれ、
ワシの前へ現れた男……」
キサブロー「彼は、多くの世界を守るために
戦ってきた戦士なんじゃ」
コウタ「じゃあ、あいつの敵ってのは?」
キサブロー「異次元の扉を開き、
様々な世界の支配を目論む邪悪な存在。
ロアと浅からぬ因縁があるらしい」
コウタ「!
もしかして、あいつが身体を失っちまった原因は……」
キサブロー「そう。
彼はこことは違う世界で宿敵と戦い、敗れ……」
キサブロー「大破したコンパチブルカイザーと共に
この世界へ飛ばされてきた」
コウタ「……!」
キサブロー「DC戦争よりも前の話じゃ。
ワシは偶然ロアと出会い、彼からカイザーと
ロア・アーマーを託された」
キサブロー「そして、
ワシは来るべき脅威に備えるため……」
キサブロー「市井に身を潜め、長い年月をかけて
秘密裏にコンパチブルカイザーを修復したのじゃ」
コウタ「……ロアの宿敵は、
俺達の世界へやって来るのかよ……!?」
キサブロー「その可能性は高いじゃろう。
奴はコンパチブルカイザーの力を
欲しておるらしいからの」
コウタ「じゃ、じゃあ、
爺ちゃんがコンパチカイザーを直さなきゃ……」
キサブロー「ロアの宿敵を完全に倒すには、
カイザーの力が必要らしいのじゃ」
コウタ「コンパチカイザーはモロバレの剣ってことか」
キサブロー「両刃じゃ、両刃」
コウタ「ああ、それそれ」
キサブロー「……ともかく、ロアとカイザーが
ワシらの世界へ飛ばされて来た時点で、
戦いは避けられぬものとなった」
コウタ「……」
キサブロー「そして……
ロアがお前を選んだのは、奇しき運命だった」
キサブロー「ワシがもっと若ければ、
ファイター・ロアとなってカイザーに
乗り込んでおったのじゃが……」
コウタ「よせやい。
その体型じゃ、あのアーマーは着られねえぜ」
キサブロー「……コウタ。
ロアと彼に選ばれたお前は、
異世界からの侵略者と戦う宿命にある」
コウタ「ショウコをさらった雷神野郎や、
俺の邪魔をした変なロボットも
そいつの仲間なのか?」
キサブロー「そうかも知れん。
彼らはコンパチブルカイザーの目覚めを知って、
浅草へ現れたようじゃからの」
コウタ「なら、何でショウコをさらう!?
ロアを狙うんだったら、俺を襲えばいいのに!」
コウタ「それに、あの雷神野郎は
一度俺達を助けたじゃねえか!」
キサブロー「その謎を解くためにも、
お前はロアと共に旅立て」
コウタ「……」
コウタ「……わかった、爺ちゃん。
俺は腹をくくったぜ」
コウタ「ごねたって、来るもんは来る。
逃げたって、敵は襲ってくる。そうなんだろ?」
キサブロー「……うむ」
コウタ「なら、俺はロアと一緒に戦う!
俺達の世界へちょっかい出してくる連中をブッ叩く!」
コウタ「そして、必ずこの手でショウコを取り戻す!」
キサブロー「そうと決まったら、今は休め。
ワシはコンパチブルカイザーを整備し、
お前の旅支度を整えてやる」
コウタ「……ありがとよ、爺ちゃん。
必ず……必ずショウコを連れて帰るからな」
(襖開閉音・コウタが立ち去る)
キサブロー「コウタよ……。
ロアと共に旅し、そして知るがいい。
この世界の危機を……」
キサブロー「それを食い止める力は、
お前だけにあるのではない。お前が行く先で
出会うであろう戦士達と共にあるはずだ」
キサブロー「頼むぞ、コウタ、ロア。
世界の命運をお前達に託す……」