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ワイズ・ドール エチオピアへ行く ~ 第12話 ~

《アースクレイドル内部》

レモン「……デザートクロス作戦、 上手くいってるみたいじゃない?」
ヴィンデル「うむ。こちらが戦力の 同時多数展開を行うなど、敵には 予測もつかなかったはずだからな」
レモン「バン大佐のお手並みも 予想以上だし、戦力を提供した 甲斐があったわ」
ヴィンデル「ああ、後は見極めるだけだ」
レモン「この機会に やっておきたいことがあるんだけど、 いいかしら?」
ヴィンデル「何だ?」
レモン「初期ロットのテストよ」
ヴィンデル「量産型の人形か。 仕掛ける相手は?」
レモン「ハガネがベストね。 前回のこともあるから、バン大佐から 条件を出してくるかも知れないけど」
ヴィンデル「構わん。 私としても、あの連中の足止めを しておきたいからな」
レモン「わかったわ。 ……W16、あなたが彼らの指揮を 執りなさい」
エキドナ「了解です」
レモン「メインターゲットはハガネ。 攻撃パターンはレベル2止まりで」
エキドナ「はっ」
レモン「それと……今回のテストで 彼らの耐久性を調べたいから、 無茶をさせても構わないわよ」
エキドナ「撃墜されても構わないと 言うことですか?」
レモン「ええ、初期ロットは まだ数に余裕があるし……」
レモン「あなたがデータを きちんと持って帰りさえすれば、ね」
エキドナ「……W17から 交換用シナプスの請求がありましたが、 それについては?」
レモン「今、予備が無いのよ。 準備するにしても、時間がかかるわ。 あの子にはそう伝えておいて」
エキドナ「了解。では、出撃します」
(扉が開閉する・エキドナが立ち去る)
ヴィンデル「……W17に 問題はないのだろうな?」
レモン「こないだまであの子からの連絡が なかったのは、アンジュルグの機密 通信装置が壊れていたせいだし……」
レモン「言語機能の故障で済んでるだけ 大したものよ」
ヴィンデル「……だといいがな」
レモン「あら……あなたもアクセルと 同じようなことを言うのね」
レモン「彼らは今後の作戦に なくてはならない存在なのに」
ヴィンデル「だからこそ、ミスは許されん。 データが揃うまでの損失は問わんが、 後期ロットの調整は完璧にな」
レモン「ええ……わかっているわ」

〈アースクレイドル内部〉

アーチボルド「ヴィンデル大佐直属の 特殊任務実行部隊……ですか」
バン「そうだ」
アーチボルド「私の部隊の者を同行させる 理由をお聞かせ願えますか?」
バン「今後の作戦運用のために、 彼らの実力を調べておきたい」
アーチボルド「後で報告書を 提出させれば済む話なのでは?」
バン「それでは意味がない」
アーチボルド(……どうやら、 バン大佐もヴィンデル大佐に 疑念を持っているようですね)
アーチボルド(それに、僕としても 情報を手に入れたいところですし……)
アーチボルド「わかりました。 では、ユウキ君……君に任せますよ」
ユウキ「了解です」
バン「ユウキ・ジェグナン少尉、 お前の目的はあくまでも実行部隊の データ収集だ。よいな?」
ユウキ「はっ。 それでは、出撃します」
(扉が開閉する・ユウキが立ち去る)
バン「……」
バン(結果はどうあれ、 牽制にはなる。外に対しても…… 内に対してもな)

《ハガネ艦橋》

ダイテツ「……以上のように、 我々のキルモール作戦は 出鼻をくじかれる形となった」
カイ「よもや、 DC残党に出し抜かれるとは……」
イルム「こりゃ 手痛いカウンターパンチだな」
ライ「現在の戦況はどうなのです?」
ダイテツ「DC残党はニジェール地区の 自治政府を管轄下に置き、現在は アルジェリア南端へ侵攻中だ」
ライ「……動きが速すぎますね」
ラミア(いや……予定通りだ)
カイ「DC残党の目的は アルジェリア北部の制圧でしょうか?」
ダイテツ「おそらくな。 あの周辺の自治区は旧西暦時代の 植民地政策の歴史の反動で……」
ダイテツ「連邦政府樹立後も民族独立 運動や部族抗争で内戦が続き、 連邦の干渉が上手くいっていない」
ダイテツ「DC残党はそれを利用し、 地勢を味方につけたのだろう」
ダイテツ「最終的に彼らはあの辺りの 反連邦主義者をまとめあげ、地歩を 固めてヨーロッパへ侵攻し……」
ダイテツ「連邦大統領府があるパリを 制圧するつもりだろう」
キョウスケ「エチオピアの本隊は?」
ダイテツ「敵艦隊の追撃を受け、 地中海方面へ撤退中…… 指揮系統もかなり混乱している」
キョウスケ「……」
ブリット「DC残党がそれほどの戦力を 持っていたなんて……」
ラトゥーニ「かつてのDCは、必要数の アーマードモジュールの生産時間を 当初から戦略に組み込んでいた……」
ラトゥーニ「でも、 前大戦から現在の戦力を揃えるまでの 時間が短すぎると思います……」
イルム「ま、イスルギあたりが スポンサーになって、資金と戦力を 提供しているんだろうが……」
イルム「例の量産型のゲシュペンストや ブレードを踏まえると、他にも 協力者がいそうだな」
ラミア「……」
カイ「艦長、これからどうするのです?」
ダイテツ「撤退中の本隊と合流する。 ただし、ここから先は連邦ではなく、 DC残党の勢力圏となる……」
ダイテツ「各員は 気を引き締めて任務に就いてくれ」
カイ「はっ」
(アラート)
テツヤ「艦長、2時方向6000に 敵艦隊の反応あり! 友軍部隊を 追撃中のようです!」
ダイテツ「早速か。 総員、第一種戦闘配置!  機関、最大戦速!」
ダイテツ「敵艦隊に仕掛ける!」


第12話
ワイズ・ドール

〔戦域:草原〕

(ハガネが出現)
テツヤ「艦長!  敵艦隊に追いつきました!」
ダイテツ「対艦砲撃戦用意!  PTを出撃させろ!」
テツヤ「了解!」
(アンジュルグ、ブリット機が出撃、出撃準備)
NDC艦長「艦隊は このエリアの突破を優先する!  各機は敵を迎撃せよ!」
DC残党兵「はっ!」
エイタ「!  ライノセラス級に動きが!」
テツヤ「もしや、 ここを強行突破するつもりか!?」
ダイテツ「敵艦を行かせるな!  必ず撃沈せよ!」
テツヤ「はっ!  スティール2より各機へ!  狙いをライノセラス級にしぼれ!」
(ライノセラスの離脱位置を指す)
テツヤ「敵艦隊を あのラインへ到達させるな!」
カイ「みんな、聞いての通りだ!  雑魚を相手にせず、ライノセラス級へ 攻撃を集中させろ!」
ブリット「了解!」

〈ライノセラス1隻撃墜〉

テツヤ「! 何だ!?」
エイタ「9時方向に高熱源体群!  敵の増援部隊です!」
テツヤ「このタイミングで!  各機、警戒せよ!」
(敵機増援が出現)
ブリット「量産型のゲシュペンストに アルブレード……!」
キョウスケ「アラビア半島で 遭遇した部隊と同じか」
イルム「やれやれ、 幽霊が出る時間にしちゃ早過ぎるぜ」
ラトゥーニ(もしかして、あの中には オウカ姉様とゼオラが……?)
ライ「あの数……DC残党は 本当にゲシュペンストMk-IIを 量産していると言うのか?」
キョウスケ「詮索しても始まらん。 出所がどうであろうと、 敵ならば倒すだけだ」
ライ「ああ、わかっている」
ラミア(……本隊のゲシュペンストか。 いよいよ本格的にハガネを 狙い始めたのか?)
エキドナ「ターゲット、ハガネを確認」
ラミア(あれは…… RGC-034、ラーズアングリフ)
ラミア(ということは隊長か?  もし、そうならば……)
エキドナ「ユウキ少尉、 ゲシュペンスト隊を仕掛けさせる。 ……そちらは好きにしろ」
ユウキ「何……?」
エキドナ「異物が混入すると 隊の統率や連携が乱れる」
カーラ「異物?  それって、あたしらのこと!?」
エキドナ「そうだ」
カーラ「ちょっと!  随分なこと言ってくれるじゃない!」
ユウキ(あのパイロット達は 俺達と違うと言うことか。 だが、その違いとは何だ?)
エキドナ「独自に戦闘行動を 取るもよし、彼らの戦闘能力を 調べるもよし。好きにすればいい」
ユウキ(……気づいていたか)
エキドナ「ただし……」
ユウキ「ゲシュペンスト隊の 邪魔をするなと?」
エキドナ「ああ」
ユウキ「了解した」
カーラ「ユウ!」
ユウキ「バン大佐の命令を優先する。 連中の手並みを見るぞ」
カーラ「味方の艦隊を 助けなくってもいいの!?」
ユウキ「それは ゲシュペンスト隊に任せる」
カーラ「そんな……!」
ユウキ(俺だって、 好きでやっているわけじゃない)
エキドナ(……コード発信。 ハガネへ集中攻撃をかけ、 推進部にダメージを与えろ)
量産型W「了解」
エキドナ(W17の相手は私がする。 お前達は手を出すな)
エキドナ(なお、撃墜された場合は コードATAを遂行……証拠を残すな)
量産型W「了解」
エキドナ「では、攻撃開始」

〈ライノセラス2隻目撃墜〉

ユウキ「くっ、沈められたか……!」
カーラ「エキドナ!  何でゲシュペンスト隊は 味方を助けないのさ!?」
エキドナ「我々はそのような任務は 与えられていない」
カーラ「何だって!?」
ユウキ(お互い様ということか)
カーラ「くうっ……!  もう見ちゃいられないよ!!」
(カーラ機が中央の湖まで移動)
ユウキ「カーラ!」
ブリット「行かせるか!!」
(ブリット機がカーラ機にぶつかり、カーラ機に爆煙)
カーラ「うっ! ああっ!!」
ブリット「さあ、観念しろ!」
ユウキ「チッ!」
(ユウキ機がカーラ機のそばまで移動)
ブリット「邪魔をするな!」
ユウキ「そうはいかん。 あれでも俺のパートナーだからな」
ブリット「! お前は!?」
カーラ「ユウ……!」
ユウキ「カーラ、 お前はここから離脱しろ!」
カーラ「で、でも!」
ユウキ「ここで死ぬ気か!  さっさと行くんだ!」
カーラ「う、うん……!」
(カーラ機が撤退)
エキドナ(……任務より 己の感情を優先したか。くだらん)
ラミア(アラド・バランガと同じ…… 任務を放棄し、身を挺して 味方を守った)
ラミア(兵士としては失格……。 だが、いったい何のために そのようなことを?)
ラミア(与えられた任務を 捨ててまで……何故だ?)
ラミア(そして、どうして 私はそのことが気にかかる……?)
ブリット「……お前、 この間のパイロットだな!?」
ユウキ「……」
ブリット「お前達、 自分が何をやっているか わかっているのか!?」
ユウキ「そんなこと、 言われるまでもない」
ブリット「何だと!?」
ユウキ「今、地球で 内乱を起こしている場合ではない。 お前はそう言いたいのだろう?」
ブリット「ああ!  お前達もアンノウンの存在を 知っているはずだ!」
ブリット「それに連邦部隊の 消失事件……俺達が戦っている裏で 何かが起きているのは事実なんだ!」
ユウキ「……」
ブリット「今の混乱は 第三者へ好機を与えることに なるかも知れないんだぞ!」
ユウキ「……前にも言ったはずだ。 お前達では地球圏を守ることなど 出来ん」
ブリット「!」
ユウキ「だが、 お前が本当に地球圏の命運を 案じているのなら……」
ユウキ「DCに来い。そして、 俺達が作る新たな体制の下で戦え」
ブリット「ふざけるな!」
ブリット「お前はどうか知らないが、 お前の上にいる人間に別の目的が あるのは間違いない!」
ユウキ「……」
ブリット「超機人の強奪未遂、 量産されるはずのない機体、 この世界にあるはずのない機体……!」
ブリット「おかしいとは 思わないのか!? 陰謀めいたものを 感じていないのか!?」
ラミア「……」
エキドナ「……」
ブリット「それとも、 お前もそれに加担しているのか!?」
ユウキ「これ以上話すことはない。 ……行くぞ」
ブリット「くっ! このっ!!」

〈vs 量産型ゲシュペンストMk-II〉

[ラミア]

ラミア(あの機体の動き…… 揺らぎがない。他もそうだ)
ラミア(AI制御…… いや、私と同じような存在か)
ラミア(だが、こちらも任務がある。 遠慮はせんぞ)

[1機目撃墜]

ダイテツ「ゲシュペンスト隊の狙いは 本艦の足止めか……!」
テツヤ「対空機関砲、弾幕を張れ!  敵機をハガネに近づけるな!」
ダイテツ(しかし、何だ?  奴らの動きは……?  あまりにも画一的過ぎる)

[2機目撃墜]

ブリット「あのゲシュペンスト隊、 こないだの時と動きが違う……!」
イルム「ああ。 動きが妙に機械的だな」
ライ「AI搭載型の機体でしょうか?」
ラミア「……」
ラトゥーニ「あの攻撃パターン…… 覚えがあります」
カイ「何? 本当か?」
ラトゥーニ「はい。あれはスクールで 研究されていたものに似ています」
キョウスケ「なら、 ゲシュペンストに乗っているのは スクールのメンバーなのか?」
ラトゥーニ「違います……あの機体に 姉様達のクセは見られない……」
ラトゥーニ「だから、 あれには乗っていない……」
ブリット「それ、 俺にも何となくわかるよ」
ブリット「あのゲシュペンストに 乗っているのは……人間なのか?」
キョウスケ「……」

〈vs ユウキ〉

[キョウスケ]

キョウスケ「そろそろ そちらの札を開かしてもらおうか」
ユウキ「重要なのは中身じゃない。 結果だ」
キョウスケ「だが、 己のカードを知らずに賭けるほど 愚かではあるまい?」
ユウキ「……!」

[ライ]

ライ「奪取されたファルケンや 量産型のヒュッケバインならまだしも、 またこいつが出てくるとはな」
ユウキ「フッ、 この機体によほど興味があるようだな」
ライ「当然だ。それはこの世に 存在するはずのない物だからな」
ユウキ「……!」

[イルム]

イルム「その機体……どこでどうやって 作っているか、教えてもらおうか」
ユウキ「素直に 答えると思っているのか?」
イルム「いや。お前を捕まえてから ゆっくり聞くことにするぜ」

[ラトゥーニ]

ラトゥーニ「ゼオラは アースクレイドルへ戻ったの?」
ユウキ「……あの時、ゼオラが 接触しようとしたパイロットか」
ユウキ「彼女を 知っているということは……」
ラトゥーニ「ゼオラを これ以上利用するのはやめて。 もう彼女を解放して」
ユウキ「パートナーを殺されたゼオラが それに応じると思っているのか?」
ラトゥーニ「違う、あの子は……!」

[HP40%以下]

ユウキ「チッ、もうこれ以上は……!  後退するしかないか」
ブリット「待て!!」
ユウキ「……連邦のパイロット、 名前を聞いておこう」
ブリット「何!?」
ユウキ「俺の名は ユウキ・ジェグナン。お前は?」
ブリット「ブルックリン・ ラックフィールド……!」
ユウキ「ならば、また会おう。 ブルックリン」
(ユウキ機が撤退)
ブリット「ユウキ…… ユウキ・ジェグナン……!」

〈vs エキドナ〉

[ラミア]

ラミア(ラーズアングリフに 乗っているのは……隊長か?)
(通信)
ラミア(機密通信…… このコードはW16。隊長ではない)
エキドナ「機密通信装置は 問題なく使えるようだなW17」
ラミア「新たな任務の伝達か?」
エキドナ「いや。今回は別だ」
ラミア「別?  もしや、あのゲシュペンスト隊に 関わることか?」
エキドナ「そうだ。我々の兄弟……と 言えばわかるだろう?」
ラミア(もう量産態勢に入ったのか)
エキドナ「こちらは 任務が終わり次第撤退する」
エキドナ「そちらは ヘリオスの情報をつかめたか?」
ラミア「まだだ。 詳細が判明次第、報告する」
ラミア「それと…… 言語部位の交換シナプスは?」
エキドナ「準備に しばらく時間がかかるとのことだ」
ラミア「了解」
エキドナ「では、行くぞ。 お前が疑われない程度にな」

[ブリット]

エキドナ「今の量産型では彼らを 食い止めることが出来なかったか」
ブリット「この感じ…… こいつも他の連中と同じなのか?」

[ラトゥーニ]

ラトゥーニ「あなた達は 何故、スクールの攻撃パターンを 使っているの……?」
エキドナ(スクールの関係者なら、 気づかれて当然か)

[HP50%以下]

エキドナ「……着実に 力をつけつつあるようだな」
エキドナ「任務は終了した。撤退する」
(撤退)
ラミア「……」
ラミア(我々の……兄弟、か)

〈敵機全滅〉

エイタ「敵機の反応なし。 敵艦隊の阻止に成功しました」
ダイテツ(だが、今の戦闘で 本艦の機関部に損傷を受けた……。 結果は痛み分けか)
テツヤ「艦長……」
ダイテツ「PT各機を収容。 本艦は機関部の修理を行いつつ、 本隊との合流を図る」
テツヤ「はっ」

《ブリーフィングルーム》

キョウスケ「……あのゲシュペンストが 無人機だっただと?」
ラトゥーニ「はい。機体の残骸を 回収して調べたのですが……」
ラトゥーニ「コックピットに人が乗っていた 形跡はありませんでした」
ブリット「そ、そんな馬鹿な。 確かに機械的な動きをする 連中だったけど……」
ブリット「中には 確かに誰かが乗っていたはずなんだ」
ラミア「……」
キョウスケ「パイロットが 外へ脱出した形跡は?」
ラトゥーニ「それもありません……」
ライ「ゲシュペンストのコックピットは ノーマルタイプだったのか?」
ラトゥーニ「はい。有人仕様です」
イルム「ふうん……そいつは妙だな」
ライ「ええ。普通、無人機なら コックピットモジュールを 丸ごと入れかえるはずです」
キョウスケ「なら、 何者かが乗っていた可能性は 高いと言うことか……」
イルム「文字通り、幽霊だったりしてな」
ブリット「ま、またそんなことを……」
ラミア(……機密保持のために 消去コードを発動させたか)
ラミア(私も任務に失敗すれば、 同じ結果を迎えることになる。 ……それが我々の宿命だ)
(扉が開閉する)
カイ「……ここにいたか、お前達」
キョウスケ「少佐……」
カイ「先程、マオ社にいるヒリュウ改から 連絡があった」
カイ「エクセレンやリュウセイ、 カチーナ達が地球へ降下…… 後でこちらと合流するそうだ」
キョウスケ「では、 ビルガーやファルケンのタイプL、 ヒュッケバインMk-IIIも?」
カイ「いや、ビルガーとMk-IIIは 結局ロールアウトが間に合わず……」
カイ「ファルケンは 敵との戦闘で撃墜されたそうだ」
ブリット「ええっ!?」
キョウスケ「敵……。 もしや、DC残党が月にも?」
カイ「それが……アインストとは別の アンノウンだったらしい」
キョウスケ「……!」
イルム「そいつはまた、 穏やかな話じゃありませんね」
ライ「ここに来て、 第三の勢力の登場か……?」
カイ「レフィーナ艦長によれば、 L2宙域で起きた消失事件と何か 関係があるのではないかとのことだ」
ラミア「……」
ラミア(間違いない……彼らだな)
ラミア(どうやら、 こちらでは順序が違うらしい……)

《ハガネ艦橋》

ダイテツ「大尉、 機関部の修理状況は?」
テツヤ「約70%…… 作業は2時間後に完了する予定です」
ダイテツ「そうか。本隊の現在位置は?」
テツヤ「エジプトのムータ基地まで 後退……その後、地中海へ抜け、 戦力を立て直すとのことです」
ダイテツ「ならば、アフリカ北東部の 最終防衛線はムータ基地か」
テツヤ「はい。 戦況は我が軍が劣勢……各方面軍へ 支援要請が出ているようです」
ダイテツ「その前に第二のアンノウンの 介入があれば、我々はアビアノまで 後退することになるかも知れんな」
テツヤ「……艦長は、彼らとDC残党に 関係があるとお考えなのですか?」
ダイテツ「いや、おそらくは……」
(通信)
エイタ「本隊より暗号電文です。 ハガネはムータ基地でシロガネと 合流されたし、とのことです」
テツヤ(シロガネ……。 リーがこちらへ来ているのか)
エイタ「なお、エクセレン少尉達は すでに先方でシロガネと 合流しているそうです」
ダイテツ「よし…… 針路変更、本艦はこれより ムータ基地へ向かう」

《アースクレイドル内部》

ヴィンデル「……テストの結果はどうだ?」
レモン「全機撃墜されたけど、 改良点のヒントが得られたわ」
レモン「それに、ハガネの足止めも 出来たみたいだしね」
ヴィンデル「証拠の隠滅は 万全なのだろうな?」
レモン「それはもちろん」
レモン「バン大佐がつけた お目付役さん達は彼らの正体に 気づかなかったみたいだし……」
レモン「仮に向こうで 何かあったとしても、 W17が何とかするでしょうしね」
ヴィンデル「……」
レモン「それで…… 次の段階に進みたいんだけど」
ヴィンデル「あの男を使うのか?」
レモン「ええ、 機体の調整も終わっているわ」
レモン「しばらくの間、彼はアクセルの 代わりを務めてもらいましょう」
ヴィンデル「連邦とバンを黙らせるには 好都合か……」
レモン「アクセルには悪いけど、 ターゲットは狼さんでいいかしら?」
ヴィンデル「構わん。 奴がここで倒れるようなら、 所詮それまでの男だと言うことだ」


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