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トーマスの罠 リュウセイルート ~ 第15話 ~

《DC総司令部》

ビアン「バレリオン部隊が ハガネに敗れたそうだな、 アードラー…」
アードラー「も、申し訳ございません。 しかし、実戦での問題点をいくつか 発見しましたので、改善を…」
ビアン「フフフ…あの艦は、 まだまだ強くなる。生半可な方法で 沈めることは出来んぞ」
アードラー「で、では、 ハガネへの正式な攻撃命令を…」
ビアン「よかろう。 ただし、中欧制圧作戦開始までの 期限付きでな」
(扉が開閉する・ビアンが立ち去る)
アードラー(一応、 総帥にはハガネを沈める意思が あるようじゃな…)
アードラー(…じゃが、今までのような 正攻法は、あの艦には通用せん…)
アードラー(ここはひとつ、 あの男を使ってみるか…)

《ハガネ艦橋》

エイタ「艦長、特殊コードで 本艦にメールが入ってしいます」
ダイテツ「特殊コード?」
エイタ「はい。軍ではなく マオ・インダストリー社のもの らしいんですが…」
テツヤ「マオ・インダストリー…。 パーソナルトルーパーの メーカーの?」
エイタ「ええ…。発進元は 宇宙ステーションのコルムナです」
テツヤ「コルムナだと? 確か、 あそこはコロニー統合軍によって 制圧されたはずだが…」
ダイテツ「友軍が奪回に 成功したようだな。これで少しは 地上の戦況も好転するだろう」
エイタ「でも、どこの部隊が…?  宇宙はコロニー統合軍が圧倒的に 優勢なんでしょう?」
テツヤ「我々と同じで、 抵抗を続けている者が いるのかも知れんな」
ダイテツ(フッ、そんな芸当が 出来るのは…ヒリュウ改の ショーン・ウェブリーか)
ダイテツ「エイタ伍長、 メールの発信者と宛先は?」
エイタ「発信者はユアン・メイロン… 宛先はリオ・メイロンです」
エイタ(リオの家族かな? でも、 こんなコードを使えるなんて…)
ダイテツ「ユアンからか…。 相変わらず心配性だな」
エイタ「?  中身を確認されますか?」
ダイテツ「いや、いい。 リオ伍長にメールを渡してやれ。 ただし、直接手渡しでな」
エイタ「手渡し…?  は、はあ…了解です」

《ハガネ格納庫》

ロバート「アヤ、R-3との 定期T-LINKコンタクトを 始めるぞ。今回はレベル3までだ」
アヤ「はい」
ロバート「1番から23番までの コネクターを使用する。T-LINK 開始、5秒前…4…3…2…1…」
アヤ「サイコ・クラッチ、接続。 T-LINKコンタクト、開始」
(閃光)
ロバート「リンク係数、 10.0…20.0…25.0… レベル1、クリア」
アヤ「………」
ロバート「30.0…35.0… レベル2、クリア」
アヤ「……う、うう…」
ロバート「40.0…45.0…」
(閃光)
アヤ「う…あ…ああっ!!」
ロバート「!!  いかん、念動逆流か!?  T-LINK中止!!」
アヤ「………」
ロバート「アヤ!  しっかりしろ、アヤ!!」
ロバート(やはり、設備が 完全に整っていないハガネの中で R-3の調整をするのは無茶か…)

《医務室》

クスハ「原因は過労ですね。 熱が少し出てますが、しばらく 安静にしていれば大丈夫です」
ロバート「そうか…なら、良かった」
アヤ「すみません、博士…」
ロバート「いや、謝らなければ ならないのはこっちだよ。体調が 良くないのに無理をさせて…」
アヤ「いえ…。私は 定期のT-LINKコンタクトを 怠るわけにはいきませんから」
ロバート「あ、ああ…そうだな」
クスハ「アヤさん、 疲れを取るいい機会だと思って ゆっくり休んで下さいね」
アヤ「ううん、 アイドネウス島の攻略作戦前に そんなことは言ってられないわ」
ロバート「ダメだ。大事を取って、 今はゆっくり休むんだ」
クスハ「そうです。熱が引くまで 無理をしないで下さい」
アヤ「でも…」
クスハ「…どうしても、って おっしゃるなら…私が特製の 栄養ドリンクを作りますけど…」
アヤ「え!? そ、それは…」
クスハ「どうしたんですか?」
アヤ「う、ううん。何でもないわ。 じゃ、じゃあ…お言葉に甘えて、 休ませてもらおうかしら?」

《ブリーフィングルーム》

イルム「ふ~む…撃墜数3、機体損傷率 65%、エネルギー消耗率90%、 作戦所要時間654秒か」
リオ「どうですか、イルム中尉。 PTシミュレーターの結果は…?」
イルム「そうだな…何とか作戦目的は 果たせたものの、母艦へ帰還出来ずに 二階級特進ってトコかな」
リオ「は、はあ…。それって、帰りに 墜落しちゃったってことですよね…」
リオ(…私もリュウセイ君みたいに ゲームのバーニングPTを やっときゃ良かったかな…)
イルム「お前…何で PTなんかへ乗る気になったんだ?」
イルム「第一艦橋で オペレーターをやってる方が まだ死ぬ確率は少ないぜ」
リオ「私も…戦いたいんです。 DCみたいに、平和を踏みにじる 人達が許せないんです」
イルム「ふ~ん… 正義の味方みたいなことを言うねえ」
リオ「そうです。 私…正義のために戦いたいんです」
イルム「あらら… 随分とストレートな表現だな」
リオ「いけませんか? そういうの…」
イルム「別に悪かねえけどさ…」
イルム「正義ったって、 人それぞれだぜ? DCだって、 奴らなりの正義があるんだろうし」
リオ「だからって… あの人達の好きにさせれば、 この戦争は続く一方です」
リオ「それに…私達はエアロゲイターの 侵略からも地球を守らなければ…」
イルム「…ま、自分なりの 答えが出てるんならいいか。 じゃあ、俺は行くぜ」
リオ「ありがとうございました、中尉」
(扉が開閉する)
エイタ「ここにいたのか、リオ」
リオ「あら、どうしたの?」
エイタ「お前宛にメールが届いたから、 ファイルに落として持ってきたんだ」
リオ「メールって… こんな戦時中に、しかも軍艦へ?  送り主は誰なの?」
エイタ「ユアン・メイロンって人」
リオ「! 父様が!?」
エイタ「お前の親父さんだったのか。 でも、どんな人なんだ? マオ社の 特殊コードを使えるなんて…」
エイタ「そんなの、重役クラスの 人間でないと無理なはずだぜ?」
リオ「え? ま、まあ… 色々とワケありなの。ファイルを 持ってきてくれて、ありがとね」
エイタ「あ、ああ…」

《艦内個室》

リオ「もう、父様ったら…。 軍艦にまで直接メールを送ってくる なんて…非常識にも程があるわ」
(通信)
ユアン「……ゴホン。 あ、あ~、リオ…元気か?」
リオ「………」
ユアン「お前が家を出て、 軍隊に入ったことについて… とやかく言いはしない」
ユアン「だが…やっぱり、 家に帰って来る気はないのか?」
ユアン「父さんも母さんも、お前を なに不自由なく育てて来たつもり なんだが…どうして軍隊に…」
リオ(…とやかく言ってるじゃない)
ユアン「でも、リオは 母さんに似て、自分で言い出したら 聞かない子だからな…」
リオ「………」
ユアン「それから… パーソナルトルーパーのパイロットに なるのだけはやめておくれ」
ユアン「男勝りなお前が、 ウチの社長にあこがれる気持ちは わからんでもないが…」
ユアン「ただでさえも、父さんは ハガネへ配属となったと聞いて、 ますます心配なんだ」
ユアン「でも、 お前は母さん似にて…って、 これはさっきも言ったか」
ユアン「と、とにかく、 お前が無事でいてくれたら、 それでいいんだ」
ユアン「だから、戦争が終わったら、 必ず帰って来ておくれ。父さんも 母さんもお前を待っているから…」
リオ「………」
リオ「…相変わらずね、父様。 でも、心配してくれて…ありがと」
(アラート)
リオ「! 敵襲!?」

《ハガネ艦橋》

エイタ「敵AM部隊、接近中!」
テツヤ「DC部隊の襲来間隔が 狭まって来たな。いよいよ本気を 出してきたということか…!」
エイタ「でも、その割には 今までと比べて敵機の数が 少ないようです!」
テツヤ「何だと…!?」
ダイテツ「何かを企んでいるのかも 知れん。敵の数が少ないからと 言って、油断をしてはならんぞ」
テツヤ「はっ!」
ダイテツ「総員、第1種戦闘配備!  PTを出撃させろ!」

《ハガネ格納庫》

ジャーダ「スクランブルだ!  機体をまわせーっ!!」
リュウセイ「イングラム教官、 アヤはどうするんだよ!  あいつ、熱出してんだろ!?」
イングラム「幸い、現時点での 敵機の数は少ない。アヤの分は、 お前達でカバーしろ」
リオ「あ、あの!」
リュウセイ「リオ!  何やってんだ、こんな所で!?」
リオ「イングラム少佐、 私をPTで出撃させて下さい!」
イングラム「何だと…?」
リュウセイ「な、何言ってんだ!?  お前、PTに乗ったことないだろ!」
リオ「でも、シミュレーター訓練は ずっと前からやってるわ。だから、 アヤ大尉の代わりに出撃させて!!」
リュウセイ「馬鹿なこと 言ってんじゃねえよ。いきなり 実戦なんて無理だぜ!」
リオ「けど、リュウセイ君だって そうだったんでしょ!?」
リュウセイ「だ、だからってなあ…」
イングラム(…リオの素質を試す いい機会になるか…)
イングラム「いいだろう、リオ伍長。 出撃を許可する」
リオ「!」
リュウセイ「マ、マジかよ、教官!?」
イングラム「ただし… 自分の命は自分で守れ。いいな?」
リオ「は、はい!」


第15話
トーマスの罠

〔戦域:南太平洋上〕

エイタ「敵部隊が この空域に進入して来ます!」
(敵機が出現)
テツヤ「確かに、 いつもより機体数が少ないな…」
エイタ「どこかで潜伏している 部隊でもいるんでしょうか?」
テツヤ「リオ、レーダーに それらしい反応はあるか?」
エイタ「リオなら、 さっきからいませんよ」
テツヤ「どこへ行ったんだ、 あいつは!?」
トーマス「ヒュ~ッ、あれがハガネか。 噂どおり、ご大層な戦艦だぜ」
トーマス「バーッと派手にいきたい ところだが、今回はアードラーの 顔を立てといてやるか」
リョウト「ト、トーマス隊長…本当に 僕達だけで、あの艦を攻撃しなければ ならないんですか…!?」
トーマス「当たり前だ。ここまで来て、 情けねえことを言ってんじゃねえ」
リョウト「す、すみません…」
トーマス「ったく、てめえも アードラーのジジイに選ばれた パイロットなら…」
トーマス「ちったあ、 あのテンザンを見習えってんだ」
リョウト「ぼ、僕は あの人のようには戦えません…」
トーマス「やれやれ、 てめえはまだ、戦争の何たるかを わかってねえようだな」
リョウト「え?」
トーマス「いいか、戦争ってのはな… 自分の命がチップになってる スリリングなゲームなんだ」
トーマス「だから、てめえが遊んでた バーニングPTのように、実際の 戦闘も楽しめばいいんだよ」
リョウト「そ、そんな…!」
トーマス「それに、ゲームってのは 今回みたいに多少分の悪い方が 面白いもんなんだ。わかったか?」
リョウト「…僕にはわかりません」
トーマス(ケッ、気が弱い割には ハッキリ言いやがるぜ…)
トーマス「俺の命令に逆らったら、 どういう目に遭うか…… わかってんだろうな?」
リョウト「う…!」
トーマス「わかったんなら、 さっさとハガネを攻撃しろ!」
リョウト「…りょ、了解…!」
エイタ「艦長、 各機の出撃準備が完了しました!」
ダイテツ「よし、出撃せよ!」
(ゲシュペンストMk-IITTが出撃・出撃準備)
ロバート「リオ、その機体には ライのモーションデータを インストールしてある」
ロバート「危なくなったら、操作を オートにして戦場から離脱するんだ」
リオ「は、はい!」
リオ(でも…ギリギリまでは 私自身の操縦でやってみる…!)
リュウセイ「何で俺でなく、 ライのデータを使うんだよ?  リオの機体、タイプTTなんだぜ?」
ガーネット「…生存率が 高いからに決まってるじゃない」
リュウセイ「あ、なるほど」
リュウセイ「…って、 そりゃどういう意味だ!?」
エイタ「お、おい、リオ!  何でお前がPTに乗ってるんだ!?」
リオ「話は後! ハガネの オペレート、私の分も頼むわよ!」
エイタ「ちょ、ちょっと待てよ!」
リオ「以上、通信終わり!」

〈2EP〉

リョウト「どうして、 隊長は戦わないんです!?  僕達を見捨てる気ですか!?」
トーマス「バーカ。 戦闘指揮官ってのはな、後方で 指揮を執るのがセオリーなんだよ」
リョウト「しかし…!」
トーマス「俺に文句を言ってる暇が あるんなら、敵のPTの1機ぐらい 撃墜してみせろ」
リョウト「………」
トーマス「ほら、あそこのPTは 動きが素人くさくて、お前向きの 相手だぜ?」
(リオ機を指す)
トーマス「アイツを撃墜できたら、 俺もハガネの攻撃を手伝ってやるよ」
リョウト(こ、この人は…部下の 命を何とも思ってないのか…!?)
リョウト「…わかりました、隊長。 やってみせます!」
トーマス「ま、頑張りな」
トーマス(どうせ、てめえは ここでお払い箱だからな…)

〈リオ vs〉

[リョウト]

リオ「私だって、PTで 戦えることを証明してみせる!」
リョウト「ぼ、僕は…こんな所で 死ぬわけにはいかないんだ!」

[リョウト以外]

リオ「…自分でこうするって 決めたんだから…やってみせる!」
リオ「これ以上、 DCの…悪の好きになんて させないんだから!!」

〈vs トーマス〉

[いずれかの味方]

トーマス「母艦を放っておいて この俺を狙って来るなんざ… 見上げた根性だぜ」
トーマス「だが、 このトーマス・プラット様と 渡り合うには十年早い!」

[撃墜]

トーマス「チッ!  こっちが下手に出てれば つけあがりやがって!」
トーマス「アードラーのジジイの くだらねえ命令さえなけりゃ、 てめえらなんぞには…!」
(爆発)
リョウト「た、隊長が…!  くっ、撤退しなきゃ…!!」
リョウト「!?」
リョウト「な、何だ…?  エンジンストール!?  き、機体が…墜落する!!」
(リョウト機爆発)
エイタ「敵部隊が撤退しました!」
テツヤ「どういうことだ?  この近くに別働隊はいないのか?」
エイタ「反応はありません。 本艦への攻撃を仕掛けて来たのは あの部隊だけだったようです」
ダイテツ「………」
エイタ「艦長、敵のAMが1機、機体の 不調か何かの原因で海上に墜落した ようです。どうしますか?」
ダイテツ「…回収しろ。 パイロットからDCの情報を 聞き出せるかも知れん」
ダイテツ「ただし、 機体のチェックは厳重に行い、 周辺の警戒も怠るな」
エイタ「了解」

《ブリーフィングルーム》

リョウト「………」
テツヤ(こいつが あのアーマドモジュールの パイロットか…)
テツヤ「…お前の所属と官姓名は?」
リョウト「………」
テツヤ「黙秘権は認めんぞ」
リョウト「………」
テツヤ「お前も軍人の端くれなら、 潔くハッキリと答えろ!」
リョウト「は、ハイ…!」
リョウト「ぼ、僕は… DC第15機動部隊所属の… リョウト・ヒカワ曹長…です」
テツヤ「よし…連邦軍軍規に則り、 お前を捕虜として扱う。いいな?」
リョウト「…ほ、捕虜ですか…?  そうですよね…僕はあなた達の 敵…ですから…」
テツヤ「………」
テツヤ「…エイタ、 彼を独房に入れろ。後で尋問を行う」
エイタ「了解です」
マサキ「よお、あいつが 墜落したアーマードモジュールに 乗っていたパイロットか?」
リオ「うん…」
マサキ「何か、気弱そうな奴だな。 とても軍人にゃ見えねえ」
リュウセイ「まったくだ。 DCの軍人ってのは、いかつい 連中ばかりかと思ってたけど…」
リュウセイ「ああいう奴もいるんだな」
リオ「………」
マサキ「どうしたんだ、リオ。 あいつのことが気になってんのか?」
リオ「ん、ちょっとね」
マサキ「何だ、お前… ああいうのが好みかよ?」
リオ「! 冗談言わないでよ!  私、ああいうタイプは 大っ嫌いなんだから!」
マサキ「わ、悪かったよ。 マジで怒るなよな…」
リオ(でも、あの子…どうして DCなんかに入ったのかしら…?)
リオ(自分から進んで戦いに 参加する感じには見えないのに…)

《ハガネ格納庫》

イングラム「…回収したリオンは?」
ロバート「念のため、 艦外で機体チェックをしたが… 今のところ問題点はないな」
ロバート「墜落した原因も 推進装置の不調だったみたいだ」
イングラム「内部に爆弾の類が 仕掛けられている可能性は?」
ロバート「まだ何とも言えん。あの パイロットは、爆弾か抱えて飛び込んで 来るようなタマには見えんがね」
ロバート「仕掛けがあるとしたら、 ネットワームとかじゃないか?」
イングラム「………」
ロバート「で、少佐… あのリオンをどうする気だ?」
イングラム「接収する。 AMの機体構造や各種データを 収集しておきたいのでな」
ロバート「敵の機体を艦内へ 持ち込むのは、どうかと思うが…」
イングラム「上手く行けば、 こちらの戦力にもなる。それに、 飛行可能な機体は貴重だ」
ロバート「確かに、 俺達の艦は貧乏所帯だけどさ」
イングラム「フッ…お前も 小型化されたテスラ・ドライブには 興味があるだろう?」
ロバート「う~ん、確かに。 あれを応用すりゃ、ウチのPTも 空を飛ばせることが出来るかも…」
イングラム「ならば、決まりだな」
ロバート「だけど、機体チェックは 引き続きやらせてもらうぞ。 万が一ってことがあるからな」
イングラム「ああ、任せる」


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