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斬られる前に斬れ キョウスケルート ~ 第3話 ~

《北米支部司令部》

グレッグ「君が来てから二週間… もう慣れたかね?」
キョウスケ「はい。 良くしてもらっています。 機体の状態も良好です」
グレッグ「ははは、うちには 口やかましいのがいるからな。 何といっても…」
マリオン「司令…」
キョウスケ「……?」
グレッグ「噂をすれば…。 何だね、ラドム博士?」
マリオン「フロリダに 向かわせたブルックリン曹長… 一体何をしているんですの?」
マリオン「予定よりも12時間… もう半日も遅れておりましてよ?」
グレッグ「まあまあ、博士。 もともとは一ヶ月の予定なのだぞ?  そんなに目くじらを立てんでも…」
マリオン「それだけ例の2機の完成が 遅れるということです。目くじらでも 歯くじらでも立てますわ」
グレッグ「わかったわかった。 曹長には連絡を入れておく」
グレッグ「私も あの2機には期待しておるからな。 特にアルトア…」
マリオン「お待ちを…。司令、 正式にはゲシュペンストMk-IIIです」
マリオン「あのようなコードネーム、 私は認めませんので。だいたい…」
グレッグ「わかったわかった。 とにかく、あの2機には期待している。 零式の背を守れるPTとしてな」
マリオン「では、くれぐれも これ以上遅れることのないように お願い致しますわ」
(扉が開閉する・マリオンが立ち去る)
キョウスケ「……」
グレッグ「すまんな、少尉。 彼女はマリオン・ラドム博士… ATX計画の開発主任だ」
キョウスケ「なるほど。 確かに、あの威圧感で…」
(扉が開閉する)
マリオン「言い忘れておりました」
キョウスケ「う…」
マリオン「あなた…キョウスケさん?  キョウスケ・ナンブ少尉ね」
キョウスケ「は…何か?」
マリオン「あなたの機体は損耗度が 高すぎますわ。接近戦闘は 控えめにして頂けませんこと?」
キョウスケ「………」
マリオン「そもそも、量産型のMk-IIは 試作型のタイプRがベース…」
マリオン「いくら格闘戦用の 武器を装備していると言っても、 使用には限度がありますわ」
キョウスケ「………」
グレッグ「あ~…ラドム博士、 そのくらいにしておいてやれ。 指令室でする話でもあるまい」
マリオン「わかりました。では、少尉… あとで私の所へ来てください」
(扉が開閉する・マリオンが立ち去る)
キョウスケ「…司令」
グレッグ「ははは、うちの女性陣は みんな元気がいいだろう?  君も負けんようにな」
キョウスケ「…了解です」

《ATX計画ラボ》

マリオン(キョウスケ少尉の 機体の損耗度の原因…これは彼の 操縦技術が未熟なせいではなく…)
マリオン(機体の方が追従しきれて いないせいだわ。ウフフ…本当に 面白いパイロットが来たものね)
マリオン(彼ならば、私のMk-IIIを 乗りこなせるかも知れないわ)
???(リシュウ)「…考え事かな?  あまり悩むとシワが増えるぞ」
マリオン「…その失礼な物言い、 リシュウ・トウゴウ先生ですわね」
マリオン「斬艦刀のモーション インプットは終わられましたの?  もし、まだだというなら…」
リシュウ「皆まで言わんでも わかっとる。とりあえず、 刀を振れるようにはなったわい」
マリオン「…とりあえず…?」
リシュウ「待て待て。…まったく、 年寄りの言う事は最後まで聞かんか」
リシュウ「あれは一の太刀さえ 打ち込めれば充分じゃ。今のままでも 予定どおりの破壊力を発揮しおる」
マリオン「今のままでも…?  斬艦刀が満足に使えなくても 大丈夫だとおっしゃって?」
リシュウ「うむ。 『剣ハ抜クベカラザルモノ』とも 言うからのう」
マリオン「剣を抜かない…?  まったく、あなたの考えは 理解に苦しみますわ」
リシュウ「ならば、『二の太刀ありと 思うな』…そうじゃな、お前さんにも わかりやすいように言えば…」
リシュウ「斬られる前に斬れ。 要は一撃必殺の心意気じゃよ」
マリオン「ふう…。 そういう前時代的なコンセプトは 極東支部のSRX計画で充分ですわ」
リシュウ「何を言っとる。 お前さんが作っておる例の2機も ワシから見れば五十歩百歩じゃ」
マリオン「む…失礼ですわね。 私はEOTなどという怪しげな技術に 頼るつもりはございませんわ」
マリオン「…で、パイロットの ゼンガー少佐の仕上がり具合の方は いかがですこと?」
リシュウ「上々じゃ。 ワシの指導のおかげで日に日に 剣の腕を上げておるわい」
マリオン「それで成果が出なければ、 示現流の名前が泣きますわよ?  それでなくてもリシュウ先生は…」
リシュウ「わかったわかった。 やれやれ…ゼンガーやブリットの 相手をしている方が、まだ楽じゃ」

《北米支部基地》

キョウスケ「救難信号?」
ゼンガー「ああ。フロリダを飛び立った 輸送機がバグス…いや、正体不明機の 追撃を受けているらしい」
キョウスケ(…バグス?  何かのコードネームか?)
エクセレン「ボス…その輸送機って、 もしかしてブリット君のT3?」
ゼンガー「そうだ」
キョウスケ「ブリット…?」
キョウスケ「もう一人のメンバー、 ブルックリン・ラックフィールド 曹長のことか?」
エクセレン「そそ。もう、あの子ったら 若いのに鈍くさいとこあるから…」
キョウスケ「それは 本人のせいじゃない気もするが…」
ゼンガー「俺は零式で出る。お前達は 訓練で使っているゲシュペンスト Mk-IIでついてこい」
キョウスケ「零式? 新型か?」
エクセレン「グルンガスト零式… あのテスラ・ライヒ研究所が作った 特殊人型機動兵器の試作機よ」
キョウスケ「特殊?  パーソナルトルーパーではないと?」
エクセレン「そそ。…まあ、 俗に言うスーパーロボットって奴ね」
キョウスケ「格納庫では 見かけなかったが?」
エクセレン「整備の仕方も何も 全然違うもの。地下の専用格納庫で ひっそりと、ね」
エクセレン「とにかく、 アレを見たらビックリするわよん?  お楽しみにね!」
ゼンガー「話はそこまでだ。 すぐに出撃するぞ!」
キョウスケ「了解」


第3話
斬られる前に斬れ

〔戦域:草原〕

ブリット「くっ… あいつら、まだ追ってくるのか!?」
連邦軍兵「ブルックリン曹長!  これ以上は逃げ切れません!」
ブリット(どうやら、ここらで 覚悟を決めた方がいいみたいだな)
ブリット「こちらアサルト3!  俺が敵機を引き受ける内に T3はここから脱出してくれ!」
連邦軍兵「りょ、了解!」

〈敵を3機撃墜〉

ブリット「1機だけじゃ、そろそろ 限界か。何か手を考えなきゃ…!」
(T3のすぐ北側にメギロートが出現)
連邦軍兵「うわああっ!!」
ブリット「しまった、輸送機が!!」
(グルンガスト零式、ゲシュペンストMk-II×2が出現)
ゼンガー「グルンガスト零式、 見参…!」
ブリット「!  あ、あれはゼンガー隊長の…!?」
ゼンガー「隙ありッ!!」
(増援のメギロートの上側に移動し、斬艦刀で攻撃)
エクセレン「わお!  いきなり切り札を使っちゃう?  もう少しもったい付けた方がねえ…」
ゼンガー「…いい剣だ。 切れ味も申し分ない。リシュウ先生に 礼を言わねばな」
ブリット「す、すごい…!  あんな巨大な剣を振り回すなんて…」
キョウスケ(先手必勝、一撃必殺か。 ATX計画…なるほど、確かに 普通じゃないな)
ブリット「ゼンガー隊長!!」
ゼンガー「…詰めが甘かったようだな、 ブルックリン。斬られる前に斬れ… いつもの教えを忘れたか」
ブリット「す、すみません。 敵機の数が多くて…」
エクセレン「ほらほら、言い訳は しなぁい。武士は喰わねど片想い… って言うじゃない?」
ブリット「こっちも大変だったんです!  それに、そこは『片想い』じゃなくて 『鷹容姿』ですよ!」
エクセレン「あらん、さすがは 日本マニア。結構余裕あるじゃない」
キョウスケ「…『高楊枝』だ」
ブリット「え? そ、そうでしたっけ?  …っと、この人は?」
ゼンガー「ATXチームの新メンバー、 キョウスケ・ナンブ少尉だ」
ブリット「じゃあ、やっと三人目が?」
キョウスケ「よろしくたのむ、 ブルックリン曹長」
ブリット「了解! ブリットで 結構です、キョウスケ少尉!」
ゼンガー「よし、 タウゼントフェスラーを援護し、 脱出させる。各機、ぬかるなよ」
ブリット「わかりました!」
エクセレン「はぁい」
キョウスケ「…了解」
キョウスケ(…あの敵は何者だ?  見たところ、戦闘機やパーソナル トルーパーではない…)
キョウスケ(EOTI機関が開発した 新型の機動兵器…?)
キョウスケ(新メンバーに、新しい敵… 落ち着かん話だな)

〈敵機全滅〉

エクセレン「片づいたみたいね」
連邦軍兵「T3よりアサルト1へ!  これよりこの空域を離脱します!」
ゼンガー「了解した」
(T3が撤退)
ブリット「これで一安心ですね、 ゼンガー隊長」
ゼンガー「油断するな、ブルックリン。 戦いはまだ終わっていないぞ」
(敵機増援が出現)
エクセレン「団体さんご案内~…って、 意外と動きが早いわねえ」
キョウスケ「わからんな… こいつら、輸送機を狙っている わけではないのか…?」
ゼンガー(…俺の零式を調べに来たと 見て間違いないだろうな)
ゼンガー「よし、後はお前達に任せる」
ブリット「へ!?」
エクセレン「はあ!? ちょっとボス!  説明してよね!」
ゼンガー「問答無用!  敵を倒すまで帰還は許さん。 基地に戻るまでが任務だと思え!」
(グルンガスト零式が撤退)
エクセレン「いや、 遠足じゃないんだから!  ちょっと、キョウスケぇ…」
キョウスケ「…チーム初の 実戦訓練としては手頃か」
ブリット「しゃべってる場合じゃ なさそうです! 敵が来ます!」
キョウスケ「さて…やろうか…!」

〈敵機全滅〉

エクセレン「ふう。ブリット君、 残った敵は?」
ブリット「見当たりません」
キョウスケ「とんだ実戦訓練だったな」
ブリット「ええ。うちの隊長は 何でも突然で急な人ですからね」
エクセレン「せっかちな男は 嫌われるのにねえ」
キョウスケ「女に嫌われるだけで 戦争に勝てるなら、安いもんだ」
エクセレン「わお、 よろしくない考え方じゃなぁい?  そもそも男と女ってのはねえ…」
ブリット(キョウスケ少尉が 来てくれたおかげで…)
ブリット(これからはエクセレン少尉に からかわれずに済みそうだな)

《北米支部司令部》

グレッグ「任務ご苦労だった。チームは 上手く機能しているようだな」
ゼンガー「当然です。あの程度の 戦いで生き残れぬようなメンバーを 選抜した覚えはありませんので」
グレッグ「そうか。 ふむ…君をATXチームの隊長に 任命して正解だったようだな」
グレッグ「さすがは 特殊戦術教導隊出身の…」
ゼンガー「…そのお話は どうかご遠慮下さい」
ゼンガー「自分の過去…。 キョウスケやエクセレン、 ブルックリンには教えておりません」
グレッグ「…そうか」
ゼンガー「それよりも司令… 『エアロゲイター』の件ですが…」
ゼンガー「ここ最近、 特定区域での偵察機の出現率が 高いように思われます」
グレッグ「その報告は受けている。 北米、南欧、極東、そしてマーケサズ 諸島の特定地区…だな?」
ゼンガー「それらの共通点は 対エアロゲイター用の兵器を研究・ 開発している場所だということ…」
ゼンガー「先程の偵察機も 例の2機やグルンガスト零式の調査が 目的だったかも知れません」
グレッグ「奴らがそこまでの情報を つかんでいるとは考えにくい…。 深読みのしすぎではないのかね?」
ゼンガー「………」
ゼンガー(いずれにせよ、 エアロゲイターが本格的に行動を 開始する日は近いな…)
グレッグ「とにかく、 積み荷もようやく到着したことだ… 早速、テストを開始してくれ」
ゼンガー「はっ」

《北米支部基地》

エクセレン「ふう、さっぱりした。 …あらん? キョウスケは まだ戻ってないの?」
ブリット「ラドム博士に捕まっていた みたいですから…しばらくは帰って 来られないと思います」
エクセレン「災難ねえ。 いっつも辛気くさい顔してるから そういう目に遭うんじゃないかしら」
ブリット「あんまり関係ない気が…。 何か新型がどうとか聞こえたんで、 その話かも知れませんね」
ブリット「というか、少尉…」
エクセレン「新型ねえ。ん、なぁに?」
ブリット「…タオル一丁で うろつくのはやめてくれませんか?  あの、その…目のやり場に困るんで」
エクセレン「あららあ? いっちょ前に 言うじゃない? むふふ… お風呂上がりの珠のお肌よぉ?」
ブリット「ちょ、ちょっと! 少尉、 くっつかないで下さい! 他人に 見られたらどうするんです!?」
エクセレン「んふふ~。 相変わらずねえ、ブリット君?  見られたからって減らないわよん?」
ブリット「そ、そそ、そういう問題じゃ なくてですね…!」
(扉が開く)
キョウスケ「戻った。ATXチーム、 格納庫に集…ん?」
ブリット「キョウスケ少尉!?  あ、いや、こ、これはエクセレン 少尉が…」
エクセレン「わお、 ややこしいことになるかも?」
キョウスケ「…すまん、邪魔した。 続けてくれ」
(扉が閉じる・キョウスケが立ち去る)
ブリット「えーーーー!?」
エクセレン「いやいや!  そういう納得の仕方しない!  ちょっと! キョウスケ!」
ブリット「と、とりあえず、 自分達は集合みたいですけど…?」
エクセレン「…了解。もう、せっかく ひとっ風呂浴びたのにねえ」


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