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黒いガンダム アーク

〈海岸〉

デビッド「そういえば、結局ほかのは どうだったんだ?」
ルー「どうって……なにが?」
アポリー「M作戦についてだろう
 地球に落下したのは 6つだったという話だ」
ルー「でもそれらしい騒ぎが 確認できたのは5か所で
 もう1つは不明だって話よ」
デビッド「やっぱり全部あれみたいな やつだったのか?」
ルー「ちゃんとは確認できてない みたいだけどね
 残り4か所は遭遇した部隊が 全滅してるって聞いたわ」
アンナ「いったい、どんな人たちなのかしら」
アポリー「やられないかぎりは、 いずれ会うこともあるさ
 それよりもアンナ、 エイジの方は大丈夫なのか?」
アンナ「……とりあえず、落ち着いては いるみたいです。でも……」
アポリー「姉の婚約者だったって 話だからな
 ま、少しぐらいはしかたがないが……」
デビッド「なに、あいつだって、だてに帝国に 戦いを挑んでるわけじゃない
 大丈夫さ」

(機械音)
ヒイロ「A級市民の学校か…… ちょうどいい
 転入手続き……クリア。 各種入金……クリア
 帝国軍の基地データの アクセスは……」
(機械音)

先生「今日からみなさんと一緒に 学ぶことになった
 ヒイロ・ユイくんです」
ヒイロ「よろしく」
リリーナ(あの子……あのときの…… 間違いないわ)

〈ニューヨーク〉

カルラ「……ジュリア・アスカ……まさかお前が くるとはな」
ジュリア「……………………」
カルラ「お前にブラッディカイザルに乗る 資格などない! ゲイル中尉の
 愛機と同型のこの機体には、 中尉の復讐をとげられる者が
 乗らねばならない。お前にその資格 があるのか!?
 エイジと血のつながっているお前に!」
ジュリア「……………………」
カルラ「なんとかいったらどうだ。ふん、何もいえ まい。もともとこのブラッディカイザルは
 中尉の信頼と愛を得ていた私 が乗っていて当然なのだ。なのに
 どうしてお前のような女が!」
ジュリア「愛とはどういう意味です」
カルラ「……中尉は男、私は女、男と 女の間に何があったかぐらい
 想像がつくだろう」
ジュリア「嘘です。あの人とあなたの間に、 上官と部下以外の関係が
 存在するはずがありません」
カルラ「どうしてそんなことがわかる!? 中尉 と私は寝食をともにしながら
 生活をしてきたのだ。その間のことが おまえにわかってたまるか!」
ジュリア「いいえ…………」
カルラ「くっ……なにがおかしい!」
ジュリア「わかってないのは、あなたのほうです。 あの人は私の胸で生きています
 私はあの人との愛を貫くために 家族と決別し、弟のエイジとの
 戦いをまっとうしようとしているのです。 私の中のあの人はそのことをすべて
 理解しています。あなたのいっている 嘘は彼への侮辱でしかありません」
カルラ「なんだと!? くっ……いいだろう、せいぜ いやってみせるがいい。エイジと
 地球人どもに、やられてしまわなけれ ばいいがな」
ジュリア「…………」

〈海岸〉

(ミデアで北へ移動、平原で止まる)
ブライト「作戦の手順は説明したとおりだ。 敵の新型のデータ収集が
 目的だが、可能ならば捕獲 したい。もう1つの目的は
 我々が帝国に対して 積極的に戦う意思と力を
 持っているということを 知らしめることにある。大尉」
クワトロ「こちらから敵の基地に 奇襲をかけるのは初めてだが
 試作機のテストをやっていることから 考えても、この基地にはたいした
 戦力はない。しかし、帝国軍の 増援はくる。我々の目的が
 敵基地のせん滅にあるのではない ことを、忘れるな」
ブライト「そういうことだ。みんな頼むぞ。 では、出撃だ」


黒いガンダム

(街中)
ファ「カミーユ、待ってよカミーユ」
カミーユ「いうなよ、 カミーユだってのが俺だって 誰にでもわかってしまうだろ」
ファ「みんな知ってるわよ
 本人だけが承知して ないんじゃない。
 どこいくのよ」
カミーユ「どこだっていいだろ」

(街中別の場所)
カクリコン「ジェリド!」
ジェリド「カクリコン!  スペシャルズらしくなって
 よくきてくれた」

カミーユ「……スペシャルズか……」
ファ「カミーユ!」

ジェリド「ん?」

ファ「カミーユ、待ってよ」

ジェリド「女の名前なのに……なんだ男か」
カミーユ「!!」
ファ「どうしたの、カミーユ?  ……カミーユ、だめよ、そっちは!」
(速い足音)
ジェリド「ん?  カクリコン特尉の知り合いか?」
カミーユ「なめるなっ!!」
(速い足音、殴る)
ジェリド「ぐっ!?」
カクリコン「なんだ貴様!?
 俺たちがスペシャルズと知って ちょっかいを出してきたのか!?
 とり押さえろ!」
(殴る)
カミーユ「くっ、 カミーユが男の名前で
 なんで悪いんだ!  俺は男だよ!!」
カクリコン「こいつ!」
(袋叩き)
カミーユ「ぐぅっ」
ジェリド「なんだ、こいつは」
カミーユ「く……言っていいことと、 悪いことがある!
 男に向かって、 なんだはないだろう!」
ジェリド「そうか……そういうことか。 なら男らしく扱ってやるよ。そらっ」
(殴る)
カミーユ「あぅっ」
ジェリド「ハハハハハハハッ!」
カクリコン「連れていけ!」
ファ「カミーユッ!?」

(基地)
カクリコン「レジスタンスでないものが、 なんでスペシャルズに
 ケンカをふっかけるんだ!?  ええ? おかしいじゃないか!」
カミーユ「…………」
カクリコン「黙ってちゃわからんだろうが!」
(ガンダムアラート)
カクリコン「なんだ!?」
(爆撃、震動)
カクリコン「まさか…… 敵の攻撃だってのか!?」
(扉が開閉する、足音)
カミーユ「なにが……起こっているんだ……?」

(敵機が出現)
カクリコン「こんなところに敵がくるのかよ」
ジェリド「レジスタンスだってのか!?  一体何の目的で!」
ライラ「ガンダムmkIIが目的だと 思いたいけどね
 とにかく、対応するんだよ。 来たよ」
(南端にミデアが出現、味方機が出撃)
クワトロ「あれか……黒いMS ……ガンダムだと!?」
アポリー「どうしますか、大尉」
クワトロ「戦闘データをとる ……全機、続け」

カミーユ「戻ってこない……なんだっていうんだ。 ……開いている?」
(扉が開閉する、速い足音)
カミーユ「誰もいないのか……?」
アポリー「大尉、あそこの格納庫に もう1機いるようです」
クワトロ「出てこないということは…… 動けないのか?
 よし、捕獲するぞ」

カミーユ(あのMS……)
(速い足音)
エマ「!? ちょっとあなた、何をするの!  あぶないから、やめなさい!」
(扉が開閉する)
カミーユ「……火が入っている」
エマ「ちょっとあなた、待ちなさい!」
カミーユ「危ないですよ!  下がっていてください!」
(MS機動音)
エマ「きゃあっ!! なに、この子…… MSを知っている!?」
バスク「何をしておる!  はやく出させいっ!」
エマ「バスク特佐! あれに乗って いるのは、パイロットじゃありません!」
バスク「なんだと!?
 パイロットでない者が何故 mkIIに乗っているか!
 やめさせろ!」
(カミーユが出撃)
アポリー「大尉、あれを!」
クワトロ「なに、動くのか?」
ライラ「遅いぞ、援護しろ!  おい、聞こえているのか!」
カミーユ「…………」
エマ「3号機に乗っているのは パイロットじゃないわ。押さえて!」
クワトロ「ほう……あの機体には手は出すな、 敵ではないようだ」
カミーユ「そうだ、僕は敵じゃない。 あなたがたの、味方だ!」
ライラ「子供だと!?  なぜ子供が乗っているのだ!?」
カミーユ「証拠を見せてやる!」

〈2機撃墜〉

バスク「レジスタンスどもが 調子に乗りおって
 これでは正規軍にたいして 示しがつかん
 やつらを逃がすな!」
(敵機増援1が出現)

〈敵の残数5機以下〉

(敵機増援2が出現)
ギウラ「苦戦しているようだな。 我々が援護しよう」
バスク「く……正規軍か……。 貴公らの協力に感謝する」
ギウラ「うむ。かかれ!  レジスタンスをせん滅するのだ!」
クワトロ「新手か……まずいな、 時間をかけすぎたか……」
ジュリア「…………」
エイジ「赤いグライムカイザル…… ゲイル先輩が生きていたのか!?」
ジュリア「エイジ……」
エイジ「まさか……姉さん!?  そんな、どうして姉さんがここに!?」
ジュリア「エイジ、答えなさい
 お前たちは本当に ゲイルを殺したのですか?」
エイジ「ね、姉さん……」
ジュリア「どうしたのです?  答えなさい、エイジ」
エイジ「……ほ、本当だよ。 だけど姉さん……」
ジュリア「……ゲイルは私のすべてだった
 私はお前たちを 許すわけにはいかない」
エイジ「待ってくれ、姉さん!」
ジュリア「死になさい、エイジ!」
ゴステロ「ゲイルの後を追わせてやろうかぁ
 えぇっ! たまらないなぁ 人殺しというのはぁ!」

〈vs ジェリド〉

カミーユ「お前はぁっ!」
ジェリド「この声、カミーユとかって女みたいな 名前の……あんな子供に!」

〈vs ライラ〉

ライラ「く、なんだ!? まだ子供なのに、 私の動きについてくる!?」
カミーユ「子供で悪いか!」

〈vs ゴステロ〉

ゴステロ「貴様ら、影も形もないように してやる!!」

[撃墜]

ゴステロ「くそぉぉっ、貴様ら、貴様らッ。 こ、この俺をぉぉぉぉーっ!!!」

〈vs ジュリア〉

ジュリア「戦いなさい、エイジ!」
エイジ「くっ…姉さん!」

[撃墜](エイジ)

ジュリア「あぁぁぁぁぁぁぁぁーっ!!」
(爆発)
エイジ「くっ、姉さん……俺は……」

〈敵機全滅〉

クワトロ「どうやらこの辺りが限界か……
 目的は充分に達成した。 全機撤退するぞ!」
(味方機が全機撤退)
エマ「レジスタンスにあれほど強力な 部隊が編成されているなんて。
 それに、あの子……」

〈北アメリカ中央〉

カミーユ(こんなことしちゃって……俺……。 ファは無事なんだろうか……)
クワトロ「どうした カミーユ・ビダンくん。 こないのか?」
カミーユ「……いえ、いきます。 帝国軍は嫌いですし
 なによりスペシャルズは もっと嫌いなんです」

エイジ「くっ……姉さん……」

アンナ「エイジ……」
デビッド「しばらくそっとしといてやれよ、 アンナ」
アンナ「でも……」
デビッド「言っただろ、 あいつはそんなにヤワじゃないさ」
アンナ「だけど、実のお姉さんだったのよ!?  どうして……どうして……」
クワトロ「彼は祖国を捨てて 地球のために戦ってくれている
 それは、並大抵の覚悟では できないことだ
 その彼に我々がしてやれる ことがあるならば
 それは、彼の志を 無駄にしないことだ」
アンナ「でも、 でも戦わずにすむ方法だって……」
クワトロ「ないな。 皆が君のように
 やさしい心を持っているのならば 可能かもしれんが
 我々にはその方法は 見つけられなかった
 帝国のことを、もっともよく知って いるはずのエイジくんの行動も
 それを裏づけている」
アンナ「だけどそんなの…… 悲しすぎるわ……」
クワトロ「ああ……そうだな……」

(ミデアで北東へ移動、湖の南あたり)
ルー「ブライト中佐、 ブレックス准将からです」
ブライト「まわしてくれ」

ブレックス「報告は聞いたよ、中佐。 すごいものだな……
 彼がカミーユくんかね?」
ブライト「はい」
ブレックス「よい若者たちが集まってきたと いうことか」
カミーユ「いえ、そんな……」
ブレックス「アークライトくんや君の協力で
 帝国の試作機が2機も 手に入った
 普通ではできないことだ」
アーク「僕も……ですか?」
カミーユ「偶然が重なっただけです」
ブレックス「その偶然も、 人の力があってのものだと
 信じたいのだよ。私は」

ブレックス「私の期待しすぎかな。 彼らをニュータイプと思いたいが」
ブライト「……大尉はどう思う?」
クワトロ「ニュータイプはエスパーではありません
 目に見えて違うところは ありませんが、資質は感じます」
ブレックス「そう思う。 大切にしてやってくれ
 3年前の戦争で、 地球圏は中高年者の
 極端に少ない社会構造に なってしまった
 生き残った若者たちには、次の 時代をつくってもらわねばならん」
クワトロ「はい。しかしそれが、帝国の 支配を受け入れた上での
 地球再建に向かって しまったのがスペシャルズです
 それは、認めたくはありません」
ブレックス「そうだな……」

〈五大湖の西側〉

ヘンケン「状況は好転しつつあると 思いたいですな?」
ブレックス「そうさせるのだよ。 我々でな
 ……君は知っているかね、 赤い彗星のことを」
ヘンケン「自分はジオンとの ア・バオア・クー決戦のときは
 後方の戦艦におりましたので、 直接は見ていません
 しかし赤い彗星の力というものは 感じましたし……いまも感じますね」
ブレックス「ほう、誰にだ?」
ヘンケン「クワトロ・バジーナ大尉です」
ブレックス「……彼はこの戦いの中で、 ジオン・ダイクンの遺志を
 我々に伝えようとしているのかも しれん」
ヘンケン「すべては強圧的な異星人から 地球を解放した後の話です」
ブレックス「そうだな。 我々は地球圏を
 再び人類の手に 取り戻さねばならん
 かつて地球連邦は腐敗し、 宇宙の民をかえりみなかった
 そのために起きたのが ジオン独立戦争だ
 が、今となってはそれすらも、 ムゲゾルバドス帝国と比べれば
 取るに足らない問題だったと 認めねばならん」
ヘンケン「しかし難を逃れている連中は、 帝国が去れば再び
 地球の実権を手にしたがる でしょう」
ブレックス「それはさせるわけにはいかんな
 それに、ロームフェラの動きも 気になる
 むしろ危険なのは スペシャルズを創設し
 帝国に食い込む 彼らかもしれんが……
 今の我々には、現状を打開 することに尽力する以外はないか」

〈海岸〉

ヒイロ「……………………」
(速い足音)
リリーナ「やはり、普通ではないわ。 軍の施設へ入っていくなんて」

リリーナ「お待ちなさい」
ヒイロ「お前は……」
リリーナ「あなた、ヒイロといったわね
 こんな軍の港で何をしているの、 教えて
 そしてあなたは何者?  わたくし知りたいの、あなたのことを
 なぜパイロットスーツのようなものを 着て、海岸に倒れていたのか
 話しなさい、ヒイロ」
ヒイロ「リリーナ・ドーリアン…… A級市民だったな
 深入りしすぎた。 お前を、殺す」
リリーナ「えっ!?」
(銃声)
ヒイロ「く……」
デュオ「こういう場合、どう見たって お前の方が悪者だろ。
 ケガはないかい、お嬢さん?」
(速い足音)
リリーナ「大丈夫、ヒイロ? もうやめて。 この人に、なんのうらみがあるんです」
デュオ「は……?
 おいおい、ちょっと待ってくれよ
 俺の方が悪者になっちまってる じゃねぇか」
(大きな音)
ヒイロ「……?」
ヒイロ(あれは俺のガンダム……こいつが 海中から引き上げたのか?)
リリーナ「え……何……?」
デュオ「おっと、みちゃいけねぇ。お嬢さん、 なんかわけありみたいだけど
 すぐ、こっから立ち去るのが 身のためだ。 この時代に立派な身なりの A級市民とはいえ
 お嬢さんを殺すのは、忍びない」
(速い足音)
リリーナ「ヒイロ!?」
デュオ「まだやんのか!」
(銃声×2)

リリーナ(なんなの!?  一体なんなの、この人たち!?)


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