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ティターンズの亡霊 クスハ ~ 第16話 ~

《サイド1 ロンデニオン・EARTH AREA》

[基地格納庫]

カミーユ「…アナハイムから来たパーツ、 これだけなのか?」
ファ「ええ。 頼んだ分の半分も来てないみたい」
カミーユ「これじゃ、 コウもしばらくはステイメンのままか…」
ファ「こんなことなら、 オーキスやνガンダムを送らなかった方が 良かったんじゃない?」
カミーユ「仕方ないだろ。 アムロ大尉やニナさんが月で再調整を するって言ったんだから…」
ファ「でも、火星に異星人が現れたんでしょ?  おまけにネオ・ジオンやジュピトリアンの 残党も動き出したって言うし…」
ファ「こんな状態で大丈夫なの?」
カミーユ「エマ中尉の話じゃ、 このロンデニオンに連邦軍の艦隊が 集結するそうだ」
ファ「…結局、また前の時みたいな戦いが 始まっちゃうのね…」
カミーユ「そうだな…」
ファ「こんなことなら、休みの間に モルガンテンかどこかの観光コロニーへ 行っとけばよかったわ」
カミーユ「それ、愚痴かよ?」
ファ「悪い? たまには 聞く側に回ってくれたっていいじゃない」
カミーユ「今はそんなことを 言ってる場合じゃないだろう?」
ファ「何よ、真面目ぶっちゃって。 カミーユだって、フォウが火星に 行っちゃって寂しいくせに」
カミーユ「か…関係ないだろ、そんなこと」
ファ「あるわよ。 まだ未練が残ってるんじゃないの?」
カミーユ「未練って…どういう意味だよ」
ファ「自分の胸に聞いてみたら?」
(扉が開閉する)
エマ「カミーユ、ファ…ここにいたのね?」
カミーユ「! エマ中尉…」
エマ「取り込み中だったかしら?」
ファ「いえ、何でもありません。 それより、どうしたんですか?」
エマ「連邦軍艦隊の先発隊がロンデニオンへ 近づいているわ。それに、アムロ大尉や カツ達も加わっているそうよ」
カミーユ「じゃあ、 アナハイムへ行っていたメンバーが 戻ってくるんですね?」
エマ「ええ…。それ以外の人もね」
カミーユ「もしや、クワトロ大尉が…?」
エマ「……残念だけど、違うわ」
カミーユ「…そうですか……」

[ラー・カイラム・ブリッジ]

コウ「…ロンド・ベル隊に新任の指揮官が?  本当でありますか、それは?」
ブライト「ああ。現在、アムロ達と一緒に こちらへ向かっている」
キース「その新しい指揮官って… 誰なんです?」
バニング「そうか、お前達は知らなかったな。 …俺やモンシア達の元上官だよ」
ブライト「その方は 私以上の軍歴を持ち、経験も豊富だ」
コウ「しかし… ロンド・ベル隊の指揮官は ブライト中佐以外に…」
ブライト「どうやら、私は新体制になった 軍上層部から疎まれているようでな」
コウ「いえ、そんなことは…」
ブライト「気にする必要はない。 一年戦争終結後の処遇に比べれば、 まだマシな方だ」
キース「…上層部は自分達にばかり コロニーの調査をやらせておいて、 挙げ句の果てにそれですか」
キース「何も証拠が出なかったのは、 ハッキリ言って連邦の政策のせいですよ」
バニング「キース、うかつなことを言うな」
キース「で、でも…事実ですよ?  スペースノイドはみんなジオンの 味方じゃないかって思えるぐらい…」
バニング「今さら愚痴を言っても始まらん。 俺達は与えられた戦力で、ジオンや 木星帝国軍に対処するしかない」
キース「それって、 また水際で戦うってことですよね…」
コウ「しょうがないよ、キース。 そのためのロンド・ベル隊なんだ」
キース「そりゃ百も承知だけどさ…。 こんな時にクワトロ大尉がいてくれれば 心強いってのに…」
ブライト「…………」
(通信)
トーレス「ブライト艦長、艦隊の 第一陣がロンデニオン宙域に入りました」
ブライト「そうか。 では、バニング大尉…周辺の警戒も兼ねて 彼らを迎えに出てくれ」
バニング「了解です」


第16話
ティターンズの亡霊

〔戦域:ロンデニオン周辺宙域〕

(ジム・カスタム、ガンダム・ステイメン、Zガンダムがロンデニオン傍に出撃)
エマ「バニング大尉… 全機、配置につきました」
バニング「よし…艦隊は間もなく現れる。 各員、周辺の警戒を怠るな」
コウ「了解です」
キース「…なあ、コウ。警戒ったって、 こんな所に敵が現れるのかな?」
コウ「ロンド・ベル隊の本拠地だから 大丈夫…とでも言いたいのか?」
キース「まあね」
コウ「油断は禁物だぞ、キース。 トリントン基地の事件を忘れたのか?」
キース「忘れやしないけど、 あの時とは状況が違うじゃないか。 2号機だって、今は解体されて…」
コウ「いや…あの男との決着がつくまで、 俺の気が休まることはない」
コウ「例え、ガンダム2号機の存在が 抹消されていても…だ」
キース「コウ…あんまり思い詰めるなよ」
コウ「…わかってるよ、キース」
バニング(ウラキにとっては無理もない話か。 アナベル・ガトー…ソロモンの悪夢は まだ続いているのだからな)
モンシア「…ところで、バニング大尉… ベイトの野郎やアデルがこっちに 来るって話は本当ですかい?」
バニング「ああ。それがどうかしたのか?」
モンシア「いや、あいつらに 知られたくないことがありましてね…」
(アルビオン、量産型νガンダム、ヘビーガン、ジム・カスタムが出現)
ベイト「…もしかして、 そいつはガンダムのパイロットに 選ばれなかったって話か?」
モンシア「! て、てめえは!?」
ベイト「悪いが、とっくの昔に聞いてるぜ。 新人にガンダム1号機どころか、 3号機のシートを……」
ベイト「いや、美人のシステムエンジニアまで 獲られたってなぁ」
モンシア「な、何でそんなことまで 知ってやがんだ、ベイト!!」
バニング「フッ…相変わらずだな、 奴の口の悪さは」
アデル「お久しぶりです、 バニング大尉。これで不死身の第4小隊が 揃ったわけですね」
バニング「貴様らも元気そうで何よりだ。 よく前大戦を生き残ってくれた」
ベイト「バニング大尉達が前線で 頑張ってくれたおかげですよ。ま、 モンシアの野郎はどうか知りませんがね」
モンシア「何だと、てめえっ!!」
ビルギット「…ホントに 相変わらずだな、あの人達も」
ケーラ「コミュニケーションの 一環なんだろ、きっと」
カミーユ「! あの機体は…?」
ファ「νガンダムじゃないの?」
カミーユ「いや、色と細かい部分が違う。 それに、インコム装備…… もしかして、量産型か?」
アムロ「…そのとおりだ、カミーユ」
カミーユ「アムロ大尉!」
カツ「見ただけでわかるなんて…さすかだな」
カミーユ「カツ… ガンダムの量産計画は順調なのか?」
カツ「ようやく 本格的に動き出したってところかな。 νガンダムの他にも…」
シナプス「…諸君、再会を喜ぶのは 入港を終えてからにしたまえ」
バニング「申し訳ありません、 シナプス艦長。ですが………」
バニング「貴艦のロンド・ベル隊への合流、 心から感謝すると共に歓迎致します」
シナプス「フフ… 相変わらず世辞が下手だな、バニング大尉」
バニング「は…?」
シナプス「ロンド・ベル隊の 新指揮官としての私は歓迎しかねる… それが君の本音ではないのかね?」
バニング「いえ…。 その件に関して、自分に異存は…」
パサロフ「艦長…お話中に申し訳ありません。 この宙域へ接近してくる連邦軍艦隊を キャッチしました」
シナプス「第二陣か?  …時間が早過ぎるな」
シモン「艦隊コードや隻数は 報告どおりですが…」
シナプス「………」
パサロフ「艦隊、侵入してきます」
(マゼラン改、サラミス改が出現)
シナプス「シモン、 念のために艦隊コードの再確認を」
シナプス「それから、 こちらが入港するまで現在位置で 待機しろと伝えろ」
シモン「了解」
シナプス「バニング大尉、アムロ大尉… 場合によってはモビルスーツによる 臨検を行う」
シナプス「君達も そこで待機してくれたまえ」
アムロ「了解です」
キース「臨検って… 友軍の艦隊を疑ってるってことですか?」
バニング「シナプス大佐は慎重な方だ。 万が一のことを考えておられるんだろう」
キース「まさか…。 あれ、どうみても連邦軍の艦ですよ。 いくら何でもジオンとかじゃ…」
(ハンブラビとバーザムが多数出撃)
シモン「艦隊よりモビルスーツ部隊が 発進しました! 全機、武装しています!」
シナプス「何のつもりだ!?  理由を問いただせ!」
ヤザン「ククク… まんまとこちらの手にかかったな、 ロンド・ベル!」
カミーユ「!!」
ヤザン「艦隊! 砲撃を開始しろ!」
(アルビオンに爆煙×3)
カツ「み、味方が撃ってきた!?」
モンシア「な、何しやがんでえ!!」
コウ「あのモビルスーツは…!」
カミーユ「まさか、ティターンズの!?」
ヤザン「…久しぶりだな、カミーユ」
カミーユ「お、お前は…ヤザン!  生きていたのかっ!?」
ヤザン「ああ、 狙った獲物は逃がさん主義でな。 すっと機会を窺っていたのさ……」
ヤザン「お前とゼータを倒すためにな」
カミーユ「貴様! 性懲りもなく!」
エマ「ヤザン・ゲーブル…!  増援艦隊になりすますなんて…!」
ビルギット「ティターンズの連中が まだ残ってるってことか…?」
エマ「…それはないわ」
ビルギット「なら、内通者が……」
アムロ「…上層部が 俺達の動きを妨害するつもりなら、 もっと別の方法を使うはずだ」
アムロ「…むしろ、第三者だな」
キース「もしかして、ジオンですか!?」
アムロ「いや、違う。 情報と金を必要としている連中だ」
キース「じゃ、じゃあ…ドクーガ?」
アムロ「それも違う。 俺達にとって、もっと身近な存在さ」
キース「ま、まさか…アナハ……」
ヤザン「各機へ!  ここで奴らを足止めする!  攻撃を開始しろ!」
(作戦目的表示)

〈撃墜〉

[ダンゲル]

ダンゲル「こ、後退する!」

[ラムサス]

ラムサス「だ、脱出する!」

〈vs ヤザン〉

[カミーユ]

カミーユ「ヤザン、貴様…!  ティターンズを再興しようとでも 言うのか!?」
ヤザン「ティターンズを? この俺が?  ハッハッハッハ!」
カミーユ「何がおかしい!?」
ヤザン「ジャミトフやシロッコの野望など、 知ったことか。奴らは自分の力に溺れ、 貴様らに敗れた。それだけだ」
カミーユ「ならば、何故!?」
ヤザン「愚問だな、カミーユ!」
ヤザン「俺はな… 貴様やロンド・ベルをこの手で倒せば、 後は何だっていいんだよ!」

[コウ]

コウ「生きていたのか、ヤザン・ゲーブル!」
ヤザン「フン、お決まりの台詞だな。 だが、そいつは俺相手に言うだけじゃ すまないぜ?」
コウ「どういうことだ!?」
ヤザン「その内わかることだ、その内な」

[バニング]

バニング「ティターンズの ヤザン・ゲーブル…生きていたのか!」
ヤザン「貴様もしぶとい男だな。 だが、そろそろ引退させてやる!」

[ベイト]

ヤザン「ロンド・ベルに関わったのが 貴様の運の尽きだな!」
ベイト「お呼びじゃないんだよ、 ティターンズの亡霊なんぞはな!」

[アムロ]

アムロ「その艦隊の手配… ただの残党にできる芸当じゃない。 …背後にいるのはアナハイムか?」
ヤザン「さあな。 俺は利用できる物は全て利用する 主義なんでな」

[ビルギット]

ビルギット「どこのどいつに 取り入ったか知らんが… もうあんたの出る幕じゃないんだよ!」
ヤザン「ハハハ!  貴様に俺の幕引きが出来るのか!?」

[撃墜]

ヤザン「…時間は充分に稼いだ。 全機、撤退するぞ」
カミーユ「ヤザン!」
ヤザン「焦るな、カミーユ。前の時と 同じようにじっくりといたぶってやる。 じっくりとな…!」
(ヤザン機が爆発、撤退。残っていれば他の敵も撤退)
カミーユ「くっ…!」
アムロ(…時間稼ぎと言ったな。 いったい、何のために……)
アムロ(…まさか、 あの男が動く前触れか…?)

《サイド1 ロンデニオン・EARTH AREA》

[ラー・カイラム・ブリッジ]

サエグサ「…参謀本部への照会、 終了しました。何者かに艦隊コードを ハッキングされていたそうです」
ブライト「そうか……。 まさか、ティターンズの残党が 潜伏していたとはな」
バニング「規模的には大きなものでは ありません。それより、問題は…」
ブライト「…ネオ・ジオンの残党か」
バニング「ええ。連邦軍が管理しているとは 言え…彼らの心の拠り所であるアクシズは まだ存在しています」
バニング「そして、 デラーズ・フリートを含むジオン軍は、 その全てが壊滅したわけではありません」
ブライト「ああ…。 少なくとも、ハマーン・カーンの一派は 潜伏していると見て間違いないからな」
(扉が開閉する)
エマ「ブライト艦長、 エイパー・シナプス大佐と アムロ・レイ大尉をお連れしました」
ブライト「ご苦労」
ブライト「自分がロンド・ベル隊指揮官、 ブライト・ノア中佐であります」
シナプス「エイパー・シナプス大佐だ」
シナプス「アルビオン、並びに 補充モビルスーツ、パイロット… 確かにこのロンデニオンへ送り届けた」
ブライト「はっ。 では、参謀本部からの命令どおり…」
ブライト「現時刻を以って、ロンド・ベル隊の 全指揮権を大佐に譲渡致します」
シナプス「うむ。だが、それは形式上での 話…と言うことにしておこうか」
ブライト「は…?」
アムロ「シナプス大佐…」
シナプス「私はただの監視役だ。 加えて、ガンダム開発計画の関係者として 軍上層部からは疎まれている身でな」
シナプス「アデナウアー参謀次官も 厄介払いが出来たと思っているはずだ」
ブライト「し、しかし……」
シナプス「気遣いは無用だ。 ロンド・ベル隊の指揮官は、 君をおいて他にいない」
シナプス「以降は君の指示に従おう」
ブライト「大佐……」
シナプス「ふふふ…バニング大尉や アムロ大尉も君の実力を高く評価している。 今さら私の出る幕はないだろう?」
ブライト「いえ、歴戦の艦長である シナプス大佐に比べれば、自分など…」
シナプス「謙遜せんでもいい。 ホワイトベースの伝説は連邦内では もはや神話に等しい扱いだからな」
シナプス「ただ、そのおかげで常に 最前線へ送られるのは、奥さんに とっては不幸だろうが…」
ブライト「妻も息子達も今回の赴任には 納得してくれています。イージス計画の 後に長めの休暇をもらえましたので」
シナプス「そうか。 くれぐれも家族は大切にな」
ブライト「はい」
バニング(家族か…)
アムロ「…ところで、ブライト。 クワトロ大尉の行方はつかめたのか?」
ブライト「いや…未だに不明だ」
アムロ「なら、ネオ・ジオン軍が本格的に 動き出すのは時間の問題か…」
シナプス「ならば、それを逆手に取って 我々も行動を起こすべきだな」
ブライト「行動…ですか?」
シナプス「うむ。我々はネオ・ジオン残党の 追撃任務を遂行する。君はロンデニオンで 艦隊集結の指揮を執ってくれ」
ブライト「しかし、それでは…」
アムロ「ブライト、 ここはシナプス大佐の言葉に従おう」
ブライト「アムロ…」
アムロ「ロンド・ベル隊を二つに分ければ、 片方でジオンの出鼻をくじくことが出来る」
アムロ「それに、 ラー・カイラムが後ろ盾になってくれれば、 俺達も動きやすい」
ブライト「…お前も出る気か?」
アムロ「ああ。 奴はそれを望んでいるはずだからな」
シナプス「それに… 火星の避難民を乗せた大空魔竜戦隊と 合流する必要もある」
シナプス「上手くいけば、 ネオ・ジオンや木星帝国軍を 牽制することが出来るかも知れん」
ブライト「…わかりました。 では、お願いします」
シナプス「うむ。 アムロ大尉、バニング大尉… 早急に出撃準備を頼む」
バニング「了解です」

《L5宙域付近・EARTH AREA》

[ブリッジ]

???(オサリバン)「首尾良くいったようだな、 ヤザン・ゲーブル大尉」
ヤザン「補給分の仕事はしたつもりだ。 …で、後の手はずは問題ないんだろうな?」
???(オサリバン)「心配はいらん。 先方も君の働きに感謝している…。 後は互いに遺恨を捨てればいい」
ヤザン「了解した。 それで、見返りは何だ?」
???(オサリバン)「…ネオ・ジオンと 木星帝国軍に関する情報を 私個人に提供してもらいたい」
ヤザン「提供だと? とぼけるな。 貴様の噂…ある程度は聞いているぞ?」
ヤザン「前の大戦で、ジオンの シーマ・ガラハウとかいう女狐と つるんでいたそうだな」
???(オサリバン)「さて…何の話かね?」
ヤザン(…狸が……)
???(オサリバン)「こちらも 危険を冒して直接通信を入れたのだ。 …信用してくれたまえ」
ヤザン「フン、金稼ぎも程々にな。 やり過ぎると、ガンダム2号機どころの 火傷じゃすまんぞ?」
???(オサリバン)「フフフ……覚えておこう」
(通信切れる)
ヤザン「フン…せいぜい利用してやるさ」
ヤザン「ロンド・ベル…そして、カミーユを この手で葬り去るためにな……」


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